「自治体でkintoneを活用した成功事例を知りたい」
「kintone研修って業務に則した応用も学べるの?」
自治体のDX推進が進む中で、このような悩みも多いのではないでしょうか。
本記事では、名古屋市役所様が行ったkintone研修「応用編」の一環であるテーマ別研修の内容を大公開します。
この記事を読むことで、自治体のDX推進事例や研修がどのように行われるかがわかるので、悩みをもっている自治体DX推進担当者は必見です。
基礎研修の内容に関してはこの記事をチェック
■この記事でわかること
- 名古屋市役所でのkintone導入事例と実際の活用方法
- kintoneを導入した名古屋市役所の具体的な業務効率化事例
- kintone導入後の職員の変化と得られた成果
■こんな人におすすめの記事です
- 具体的なkintoneの導入事例や活用方法を知りたい管理職の方
- 地方自治体や中小企業で業務改善を検討しているシステム担当の方
- kintoneの研修内容に興味のある方
kintone研修とは?
kintone研修は、クラウド型業務改善ツール「kintone」を効果的に活用するための知識とスキルを習得するプログラムです。
自治体では住民申請のオンライン化や、庁内業務の効率化を目的に導入が進んでおり、職員のデジタルスキル向上にもつながっています。
kintoneを体系的に学ぶには、有償研修を利用する方法が効果的です。基礎から応用まで段階的に学べるうえ、具体的な業務改善手法も身に付けられます。
また、kintone公式ページでは研修を実施する企業を簡単に検索でき、自分たちのニーズに合ったプランを選択可能です。
さらに、サイボウズに直接相談することで、業務に合わせたカスタマイズ研修やサポートを受けることもできます。
企業やコース内容によっては、実務を想定した応用編や業務別に特化した研修が用意されており、多様なニーズに応える体制が整っています。
ペパコミのkintone研修の流れは?
名古屋市役所様で実施されたペパコミのkintone研修は、以下の流れで進められました。
- 基礎研修(オフライン&オンライン、1日)
基礎研修では、kintoneの基本的な操作方法やアプリ作成の基礎を学びます。 - 各自によるアプリ制作と試運用(後日、各自で実施)
基礎研修で学んだ内容を実務に生かすため、受講者が各自でアプリを作成し、試運用を実施します。 - 応用編 テーマ別研修( オフライン、1回2時間×5回)
テーマ別研修では、5回に分けて名古屋市役所様の各部門が作成したアプリの事例共有を行います。
また、アプリを実際に運用する中で生じた疑問点や課題に対するアドバイスを行い、kintoneへの理解をさらに深めていきます。
今回は、プラグインの活用や実務に即した応用編として実施されたテーマ別研修の内容を詳しくご紹介します。
テーマ別研修の概要と目的
テーマ別研修はkintoneの基本操作を習得した職員が、実際の業務に合わせたアプリを作成できる力を身に付けることを目的としています。
基礎研修で得た知識をさらに応用し、現場での課題解決につながる応用力を磨く重要なステップです。
研修では実務に直結する事例を取り上げ、職員が現場で直面する課題への対応力を強化していきます。
【応用知識編】kintoneの機能について(プラグイン、標準機能、応用例)
kintoneの応用知識は、自治体業務の効率化や課題解決を図るために欠かせません。
プラグインや標準機能を使えば、データ管理だけでなく、より高度な業務効率化を実現できます。
下記で詳しくご紹介します。
使用プラグインについて|PrintCreator、kViewer、FormBridge、カレンダープラスPro、k-Report
研修では、kintoneを活用する上で欠かせないプラグインを解説しました。
それぞれのプラグインは、業務効率化やデータ管理を支援する重要なツールです。
以下に主なプラグインとその用途を簡潔にまとめます。
プラグイン | 用途・特徴 |
PrintCreator | データを帳票として印刷可能にするプラグイン。 定型フォーマットでの帳票作成が容易です。 |
kViewer | kintoneのデータを外部サイトやポータルに公開できるツール。住民向け情報の共有などに活用されます。 |
FormBridge | 外部フォームとkintoneを連携。住民申請フォームの受付とデータ管理をスムーズに行うことが可能です。 |
カレンダープラスPro | カレンダー形式でデータを可視化し、スケジュール管理やイベント管理に役立つ機能を提供します。 |
k-Report | 業務報告や分析に適したレポート作成を効率化するプラグイン。柔軟な集計やビジュアル化が可能です。 |
押さえておくべき標準機能|データ集計、グラフ化、通知
kintoneは標準機能をうまく活用すれば、それだけでも業務効率化に役立つアプリが作れます。
よく使う機能の代表である、「データの集計」「グラフ表示」「通知機能」の各機能は以下の通りです。
- データ集計
kintoneでは、アプリ内のデータを条件別に集計できます。
集計結果はリアルタイムで反映されるため、最新の情報を基にした迅速な意思決定が可能です。 - グラフ化
集計データをグラフとして表示する機能があり、棒グラフ、円グラフ、折れ線グラフなどさまざまな形式で情報を視覚化できます。 - 通知機能
条件に応じた自動通知が可能で、タスクの期限や変更情報をメールやkintoneの通知機能で知らせてくれる機能です。
重要な情報の見落としを防ぎ、職員間の連携がより円滑になります。
まずは標準機能をしっかり押さえ、kintoneによる業務効率化を試すのがおすすめですよ。
補助金交付作業をkintone化した場合のデモアプリ解説
研修の中でプラグインの使い方を解説するために、補助金交付業務のデモアプリを使って解説しています。
補助金交付業務のフローは以下の通りです。
🔳補助金交付のフロー | |
---|---|
申請→申請内容のチェック→申請内容を審査→交付および帳票出力 |
このフローをkintoneで実現するために、先ほど紹介したプラグインが各場面で使用されています。
申請フォームのオンライン化:FormBridge
FormBrigeを使用するとオンライン上で申請可能なフォームが作成可能。申請された内容は市役所で作成しているkintoneアプリに反映されます。
申請内容のチェック:kViewer
kViewerを使用することで、外部の関係機関にも情報を開示可能です。今回のデモアプリでは、市役所の申請内容を区役所でも確認できる想定で構築しています。
交付帳票の出力:PrintCreator
交付が決定された際に必要な帳票出力はPrintCreatorを使用しています。
このように、kintoneのプラグインを活用して補助金交付業務といった既存の業務もデジタル化が可能なのです。
【事例共有①】R5(令和5年)kintone利用申し込み職員の管理アプリ(デジタル改革推進課)
ここからは実際のkintone活用事例を見ていきましょう。
1つ目はデジタル改革推進課が手がけた、職員のkintone利用申し込み情報を管理するためのアプリ事例です。
アプリの概要と課題
このアプリは、職員が提出するkintone利用申し込み情報を効率的に管理することを目的として作られました。
主な工夫点
ルックアップ機能の活用
既存データを参照して利用者変更後の値を入力できるようにルックアップを使用し、申請時の入力負担削減を実現。
ラベルを活用した説明表示
操作方法や入力項目をわかりやすくするため、ラベルに詳細な説明を記載。
申請内容ごとの一覧出力
登録後の変更内容が自動的に別のアプリに追加される仕組みを構築し、データの一貫性を保ちながら、効率的な管理を実現。
課題
ラベルの視認性
説明を充実させる目的でラベルを多用した結果、画面が見にくくなり、操作の簡易さが損なわれてしまう。ラベルの表示・非表示をタブ表示プラグインで制御したいが、現状の機能では対応が難しく、悩んでいる。
アプリに対するペパコミからのアドバイス
申請者以外のレコードも表示されている
ただし、申請者と利用者が異なる場合は、ちょっと微妙かも知れないので実務に応じて検討してみてください。
ラベル表示方法の改善
レコードの対応状況の確認
【事例共有②】歩道橋ネーミングライツ事業の管理アプリ(道路利用活用課)
続いてご紹介するのは、道路利用活用課が取り組んだ「歩道橋ネーミングライツ事業の管理アプリ」です。
アプリの概要と課題
このアプリは、名古屋市内にある200以上の歩道橋に対するネーミングライツ契約を管理するために構築されました。
従来はExcelファイルが複数存在し、データの分散や契約情報の更新作業に手間がかかるという課題がありました。
主な工夫点
データの統合とCSV取り込みの活用
歩道橋データベースやパートナーマスターなど複数のExcelファイルを統合し、kintoneに取り込む仕組みを構築。
契約マスターでは事前にフォームを作成し、CSVで必要なデータを取り込めるよう設計。
ルックアップ機能の活用
歩道橋番号や法人番号を基準として、契約マスターが歩道橋データベースやパートナーマスターの情報を参照できるよう設定。
地図表示の工夫
カンタンマップを活用し、歩道橋の契約状態を色分けして地図上に表示。
視覚的な表示で契約状況を直感的に把握できる仕組みを実現。 |
課題
契約状況の管理の難しさ
歩道橋データベースと契約マスターを連携させるために、歩道橋番号を複数回設定する必要があり、作業が煩雑になってしまう。
ラジオボタンを活用して管理を簡略化しているものの、さらなる効率化が求められる。
座標データの変換作業
歩道橋の座標値が「度・分・秒」形式で記録されており、これを「10進数」に変換して取り込む手間が発生してしまう。
年度ごとの契約件数のグラフ化
契約データのグラフ化において、kintoneの標準機能では対応が難しく、CSVデータを抽出しExcelで加工してグラフを作成する必要がある。
アプリに対するペパコミからのアドバイス
関連レコードを使用した契約履歴との連携
全体としてこの事例の運用は非の打ちどころがないレベルでした!是非みなさんも参考にしてほしい内容ですね。
【事例共有③】応急手当普及員のデータベース構築(応急手当研修センター)
応急手当研修センターでは受講者データを効率的に管理するため、kintoneを活用したデータベースの構築を検討しています。
アプリの概要と課題
このアプリは、応急手当普及員のデータ管理を改善するために設計されています。特に再講習通知の自動化や大量データの一元管理を目的として検討を進めました。
主な工夫点
講習結果データベースの効率化
累計約8,000人分の受講者データを一元化し、必要な情報を簡単に記録・検索できるように整備。
再講習通知の自動化
3年ごとの再講習が必要な受講者に対し、該当者のメールアドレスへ自動通知を送信する機能を導入。メール送信作業を省略し、ミスの防止も実現。
講習受付の電子化
これまで紙ベースで行われていた講習受付情報を電子化し、講習実施後にデータベースへ自動転記する機能を実装。
課題
データの未反映や削除リスク
現行のシステムでは、ファイルのロックやアップロードのミスによるデータの未反映や、削除リスクがある。
関数や規則の破損
ミス防止のために設定された関数や規則が、破損して機能しないケースが発生してしまう。
アプリに対するペパコミからのアドバイス
ドロップダウンの階層化
再講習通知の自動メール配信
こちらに関しては運用前でしたので、まずは運用してみて現場から出てきたフィードバックを反映するサイクルを繰り返していただくようアドバイスしております。
【感想】テーマ別研修を終えて
今回紹介したテーマ別研修は、基礎研修で学んだ知識を活かし、実際の業務に即したアプリの開発と活用方法を深める内容です。
名古屋市役所様では、各部門が具体的な課題に取り組んでいただいたおかげで、応用的なkintone活用研修を実現できました。
アプリの作成は比較的簡単である一方、実際の運用段階で多くの課題が浮き彫りになります。そのため、今回のように基礎研修を終えた後にしっかりと実務を通じて取り組むことが重要なのです。
kintone導入に悩まれている自治体・企業のみなさんも、今回ご紹介した名古屋市役所様の礼を参考に研修を検討してみてくださいね!
また、全ての研修を終えた名古屋市役所様と座談会を実施し、リアルな感想を伺っています。その全貌についてはこちらの動画と記事にまとめていますのでぜひご覧ください!
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