顧客情報、案件進捗、社内のお知らせ事項など、社内に有るあらゆる情報はすべて会社の資産であり、重要なものです。
しかしながら日々当たり前のように情報にアクセスし取り扱っていると、その重要さを忘れてしまいがちです。うっかりデータを消してしまうと、取り返しのつかないことになりかねません。
近年は外部のツールを活用し、情報管理を行っている企業も少なくないでしょう。いくら有用なツールであっても、何かあったときに備えたバックアップは非常に大切です。
ここではクラウドサービスで有名なkintoneを例に、情報管理の一環であるバックアップについて解説します。
この記事でわかること
- kintoneのバックアップの可否について
- kintoneのバックアップの具体的な方法
- kintoneのバックアップにおすすめな4つのサービス
こんな人におすすめの記事です
- kintoneの導入検討をしているプロジェクトマネージャーやIT担当者
- kintoneを運用中の企業に勤めているIT担当者や社員
- kintoneで実際にアプリやデータを削除してしまった人
kintoneの仕組みや標準機能、拡張機能、活用事例まで、現場で役立つ情報を徹底的に下記記事にて解説しています。自社に合う業務管理ツールを探している方は、この記事でkintoneの全体像をつかみましょう。
関連記事:kintone(キントーン)とは?業務改善のためにできることや特徴・機能を紹介
kintone(キントーン)の標準機能でできるバックアップとは?
kintoneは企業のあらゆる情報をクラウドで一元管理できる、サイボウズ株式会社が提供しているサービスです。「企業のチームワーク向上」を支援しており、情報共有や業務プロセス管理ができる「業務アプリ」をノーコードで簡単に作成できることから、さまざまな業界の企業で数多くの業務改善が報告されています。
アプリの作成は1からの作成だけでなく、部署別や職種別のひな形から、CSV取り込みから、と方法は様々です。たとえば顧客管理のアプリを作成した場合、アプリに顧客情報を入力してできた1社のデータ、いわゆる「レコード」を蓄積できれば、社内の誰もが顧客情報にアクセスでき効率的です。
また、kintoneには「スペース」と呼ばれるグループチャットができる場もあり、コミュニケーションが円滑に進められるのも特長の一つといえるでしょう。
アプリ・スペースのバックアップについて
kinotneには原則、バックアップ機能はありません。ただ例外として、誤ってアプリやスペースを削除してしまった場合、14日以内であれば復旧することは可能です。
また、テンプレート機能を使って既存のアプリをテンプレート化し、別アプリ作成時に流用できる、汎用性の高い対策もあります。ただし、アクセス権やプラグイン個別設定など、テンプレートを活用できない範囲のアプリには不向きのため、注意が必要です。
レコードのバックアップについて
レコードについては、アプリやスペースのように削除から14日以内であっても復元させることは不可能です。では一切バックアップの手立てが無いかというと、そうではありません。
あくまで日頃からの事前対応にはなりますが、レコードの場合はCSVファイルに書き出すことができるため、それをアプリに読み込ませることでレコード復旧が可能になります。
手動にはなりますが、万が一の場合に備えてバックアップを取っておくことを習慣化しましょう。
kintoneの標準機能でできる3つのバックアップ方法
kintoneの標準機能で可能なバックアップ方法は以下の3つです。
- 手動でCSVを書き出す
- アプリ・スペースをテンプレート化する
- アプリ・スペースの復旧をする(削除から14日以内)
それぞれを詳しく解説していきます。
手動でCSVを書き出す
CSVファイルを書き出しておくことで、レコードのバックアップをとることができます。
主な手順を紹介していきます。
手順1:バックアップを取りたいレコードのアプリを開きます。
手順2:ファイルに書き出す項目を絞り込みます。既に一覧にしてあるレコードであれば、絞り込みせずそのまま書き出すことも可能です。

引用:サイボウズ
手順3:書きだしたい項目をドラッグ&ドロップして絞り込み、一覧を作成して書き出します。なお、添付ファイルやコメントなど、書き出せない項目もありますので注意が必要です。

引用:サイボウズ
アプリ・スペースをテンプレート化する
自社独自の設定で同様のフォーマットのアプリやスペースが複数ある場合は、テンプレート化が便利です。
【アプリの場合】
手順1:システム管理画面を開き、[アプリテンプレート]>[作成]をクリックし、テンプレート化したいアプリを選択します。複数選択でテンプレートのパック化もできます。
手順2:各項目を入力し保存すると、「アプリテンプレートの一覧」に追加され、アプリストアの[登録済みのテンプレートから作成]で選べるようになります。

引用:サイボウズ
【スペースの場合】
手順1:テンプレート化したいスペースを開きます。画面右側「オプション」アイコンをクリックし、[テンプレートを作成]をクリックします。

引用:サイボウズ
手順2:テンプレートの名前と説明を入力し、[保存]をクリックします。
アプリ・スペースの復旧をする(削除から14日以内)
cybozu.com共通管理者であれば、削除から14日以内のアプリとスペースの復旧が可能です。
手順1:設定アイコンから[cybozu.com共通管理]をクリックし、「監査ログ」の[閲覧とダウンロード]をクリックします。

引用:サイボウズ
手順2:絞り込み条件の「アクション」に、アプリの場合は「App delete」、スペースの場合は「Space delete」と入力し、[閲覧]ボタンをクリックします。
手順3:該当しそうなログの[ i ]アイコンをクリックし、「補足」欄でアプリID(スペースID)をメモに控えます。
![]() 引用:サイボウズ |
![]() |
手順4:kintoneシステム画面を開き、[アプリ/スペースの復旧]をクリック。手順3で控えたアプリID(スペースID)を入力し、[復旧]ボタンをクリックします。復旧にはアプリコードやSlack連携、アプリアクションは含まれないため、ご注意ください。
kintoneの標準機能でできないバックアップ
kintoneの標準機能では対応できないバックアップは以下のとおりです。
- 添付ファイルのバックアップ
- コメントや変更履歴の保存
- 自動バックアップ
- 一括バックアップ
- レコード単位での復元
- APIトークンやアクセス権など設定情報の保存
上記のバックアップ機能を、それぞれ詳しく解説していきます。
添付ファイルのバックアップ
kintoneの標準機能では、添付ファイルのバックアップは手動でしか行えません。CSV形式でデータを書き出す際も、添付ファイルは対象外となります。
そのため、添付ファイルを含む完全なバックアップを取るには、手作業でローカル端末や外部ファイルサーバーに保存しなければなりません。
ただし、手作業でのバックアップは負担が大きく、ヒューマンエラーが起こるリスクもあるため、自動化できる仕組みを構築しましょう。
効率的かつ確実に添付ファイルをバックアップしたい方は、外部サービスの利用をおすすめします。
コメントや変更履歴の保存
kintoneの標準機能では、コメントや変更履歴のデータはアプリ内で確認できるものの、直接エクスポートしてバックアップする機能はありません。
ただし、コメントはAPIを利用して取得し、JSON形式やCSV形式で保存できます。プログラミングの知識が必要になりますが、自動化のハードルは比較的低めです。
また、変更履歴に関しては「k-History」などの外部サービスを利用すると、容量無制限で保管できます。
コメントや変更履歴のバックアップには工夫が必要ですが、APIや外部サービスを有効活用すれば解決できます。
自動バックアップ
kintoneの標準機能では、1日1回のバックアップが行われます。しかし、障害時の復旧を目的としているため、誤操作によるデータ削除や任意のタイミングでの復元には対応していません。
また、添付ファイルやレコード単位での復元もできないため、ユーザーの操作ミスには脆弱な点もデメリットです。万が一の際に、必要なデータを漏れなく復元できる保証はありません。
一方、「kBackup」などの外部サービスを利用すれば、データ更新時にリアルタイムで自動的にバックアップを取得し、必要なタイミングで復元可能です。
細かい粒度でのデータ保全が実現でき、BCP(事業継続計画)の強化にもつながります。
一括バックアップ
kintone標準機能では、レコードデータのCSV形式での書き出しやテンプレート化による部分的なバックアップにしか対応していません。
そのため、以下の要素を含む一括バックアップを行うには、手動作業が必要となり時間と労力がかかります。
- 複数アプリ
- 添付ファイル
- サブテーブル
大規模なデータになるほど、作業負担とヒューマンエラーのリスクが高まる点にも注意が必要です。
一方、「kBackup」などの外部サービスは、定期的な自動バックアップやリアルタイムでのデータ保存が可能であり、復元時も簡単に操作できます。
数クリックでデータ全体をまるごとバックアップできるため、緊急時の対応力が大幅に向上します。
レコード単位での復元
kintoneの標準バックアップ機能は、システム障害時の復旧を目的としており、ユーザーが任意で削除したデータには対応していないのが特徴です。
そのため、kintoneの標準機能では、誤って削除したレコードを復元する手段がありません。
一方、「削除レコード復元プラグイン」や「kBackup」などの外部ツールでは、削除時に自動バックアップを取得し、必要に応じてレコード単位で復元可能です。
業務で扱うデータの重要度が高い場合、外部ツールを利用したレコード単位での復元機能は必須です。
APIトークンやアクセス権など設定情報の保存
kintone標準機能では、アプリのテンプレート化やCSV出力でデータの一部を保存できますが、APIトークンやアクセス権などの設定情報は対象外です。
そのため、設定情報をバックアップするには手動で記録するか、外部ツールを活用する必要があります。
しかし、外部サービス「kBackup」を利用すれば、設定情報を一括で保存・管理することが可能です。
アプリの再現に必要な情報をまとめて保全できるため、移行や復旧の手間を大幅に減らせます。
kintoneでバックアップを万全にするなら外部連携サービスが必要
kintoneの標準機能だけでは、データ消失のリスクを十分にカバーできません。そのため、バックアップを万全にするためには、外部連携サービスの利用が必要不可欠です。
kintoneのバックアップで外部連携サービスを利用するメリットは以下のとおりです。
- データ更新時や定期的な自動バックアップ
- レコード単位や特定時点への復元機能
- 添付ファイルも含めた完全なデータ保全
特に「削除レコード復元プラグイン」や「kBackup」などの専用サービスを導入すれば、データ消失リスクを軽減し、誤操作やシステム障害時にも復元可能です。
kintone対応のバックアップサービス4選
kintone対応のバックアップサービス4選は、以下のとおりです。
- 削除レコード復元プラグイン|バックアップを簡単に復元可能
- kBackup|全データをリアルタイムまたは定期的に自動バックアップ
- gusuku Deploit|ワンクリックでバックアップ実行
- Smart at tools for kintone CSV入出力|全データと添付ファイルをCSV形式でエクスポート
各サービスの内容をそれぞれ詳しく解説していきます。
削除レコード復元プラグイン|バックアップを簡単に復元可能
「まだバックアップをとっていないレコードが、いつの間にか消えている」。そんな状況でもレコードを復元できるプラグインです。
自社でやることは、バックアップ専用アプリを作成するだけ。コードを書く必要も一切ありません。レコードの削除と同時にバックアップが取れるため、定期的に手動でCSVに書き出す手間が省けて便利です。

引用:バックアップ専用アプリ画面(TIS、削除レコード復元プラグイン)
また、CSVファイルでのバックアップでは叶わなかった、添付ファイルやコメントのバックアップが取れるのも非常にありがたい機能です。
さらに、このプラグインは無料でダウンロードできるので、運用予算が限られている企業には嬉しいサービスなのではないでしょうか。
kBackup|全データをリアルタイムまたは定期的に自動バックアップ

引用:(トヨクモ、kBackup)
トヨクモが提供する「kBackup」ではアプリやフィールドを誤って削除してしまっても、1日1回の自動バックアップ機能により復元することが可能です。kintone標準機能ではアプリを削除した場合、14日以内の制限がありましたが、kBackupでは14日経過後も復元できます。
レコードについては30日以内であれば元に戻すことが可能です。追加・編集・削除などレコードが更新されると同時にバックアップされているため、特定のタイミングでのデータ復旧ができるのは利点と言えるでしょう。
また、セキュリティの国際標準規格であるISMSを取得しているため、高いセキュリティを保ちながら安心してサービスを利用することができます。
kBackは1ドメイン月額7,000円から利用できるようになっています。
gusuku Deploit|ワンクリックでバックアップ実行
「gusuku Deploit」はアプリ設定、データ、添付ファイルを管理できるアプリ管理サービスです。主な特徴はバックアップ機能とアプリ配布機能の2つ。
バックアップ機能としては、「バックアップ実行」ボタンをワンクリックするだけで、アプリの添付ファイルとテーブルのデータを含めたレコードのバックアップをgusukuサーバに保存できます。レコードのリストアやデータ移行も可能です。
アプリの変更作業の際、意図せずにデータを削除してしまうリスク防止や、社内の別部門でアプリデータを共有したいときに便利なサービスです。
10アプリ1GBまで無料で利用できる「フリープラン」と、アプリ数・ディスク容量をより多く利用できる有償の「プラン200」「プラン600」があります。
Smart at tools for kintone CSV入出力|全データと添付ファイルをCSV形式でエクスポート
kintoneの標準機能ではCSVデータのインポート、エクスポートを手動で行います。しかし、この「Smart at tools for kintone CSV入出力」を使えば自動でできてしまいます。
日次、週次、月次とスケジューリングされた自動化入出力によって、手動対応していた業務負担を削減できます。添付ファイルの入出力も可能です。
定期的な自動バックアップは、属人的なバックアップ体制のリスクを回避してくれるでしょう。
設定数によって月額10,000~50,000円の3つのプランがありますが、15日間の無料トライアルもできるので、試してみてから本格利用を検討することもできます。
kintoneのバックアップサービスを選ぶ際の3つのポイント
kintoneのバックアップサービスを選ぶ際は、以下の3つのポイントに注目しましょう。
- 自動バックアップ機能が搭載されているか
- リアルタイムバックアップに対応しているか
- 保存されたバックアップデータが暗号化されているか
各ポイントの内容を詳しく解説していきます。
自動バックアップ機能が搭載されているか
kintoneのバックアップサービスを選ぶ際は、自動バックアップ機能が搭載されているかを確認しましょう。
手動でバックアップを取る場合、作業負担が増加し、複数アプリの管理が難しくなります。また、誤操作やシステム障害時に、最新状態のデータを即座に復元できない恐れもあります。
一方、「kBackup」のような外部サービスを利用すれば、リアルタイムまたは定期的に自動でバックアップを取得可能です。
自動でバックアップを取得できると、ヒューマンエラーを排除し、データ消失リスクを軽減できます。
リアルタイムバックアップに対応しているか
kintoneのバックアップサービスを選ぶ際には、リアルタイムバックアップに対応しているかどうかを見極めるのも大切です。
リアルタイムバックアップがあれば、操作直後のデータを保存できます。
もし、誤削除や編集ミスが発生した場合でも、直前の状態に復元可能なため、データ復旧までの時間を短縮可能です。
また、システム障害や人的ミスが発生しても、直近のデータを即座に復旧できると、被害を最小限に食い止め、早期の業務再開につなげられます。
例えば、「kBackup」のような外部サービスは、レコードの追加・編集・削除の都度、最新のデータを即座にバックアップします。
保存されたバックアップデータが暗号化されているか
kintoneのバックアップサービスを選ぶ際は、保存されたバックアップデータが暗号化されているかを確認するのが重要です。
暗号化によって、万が一バックアップデータが外部に流出しても、第三者が内容を解読するのを防げます。
また、個人情報保護法や企業の情報セキュリティ基準に準拠するためにも、データ暗号化が必要な場合もあります。
暗号化機能を持つ外部サービスを利用すれば、データの不正アクセスや情報漏洩のリスクを軽減することが可能です。
kintoneのバックアップは可能!不安が残る方はペパコミに相談を!
情報を一元管理できるkintoneも、バックアップ体制があってはじめて安心して活用できます。何かあってからでは遅いです。標準機能とあわせてバックアップサービスもうまく活用しながら、kintoneを運用できると心強いでしょう。
「kintoneでの情報管理について不安なので相談したい」「他にはどんな方法でバックアップができるのか知りたい」という方は、お気軽にペパコミまでご相談ください。
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