本記事では、Salesforceとkintoneのシステム選択について検討する企業のため、それぞれの機能や特徴、導入におけるメリットやデメリットを解説します。
元Salesforce社員で、現在はkintoneの構築ベンダーとして活動する木村氏の視点から、両システムの相違点を詳しくご紹介します。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
Salesforceの強み
Salesforceは、企業の営業活動に必要な機能をワンプラットフォームで完結できる点が強みです。
一般的に企業が行う集客から商談、受注、売上、そしてリピートやアップセル、クロスセルといった営業活動の全プロセスをSalesforce内で統合管理できます。
ワンプラットフォームで営業活動が完結
企業はSalesforceを利用することで、集客から商談、受注、売上、リピート、アップセル、クロスセルといった一連の営業活動を一つのプラットフォーム上で統合的に管理できます。これにより、顧客に対して迅速かつ高い付加価値のある購買体験を提供することが可能になります。
SFAとMAの連携による営業支援
Salesforceは、営業支援ツール(SFA)として顧客との対面セッションを管理します。
さらに、マーケティングオートメーション(MA)部分であるPardotのような製品と連携し、顧客が自社ホームページを何回訪問したかといったウェブ上の行動を管理します。
これらを複合的に加味して顧客の確度を点数化し、営業部門に対して、どの顧客にアプローチすべきかを示唆します。
これにより、多数の見込み客の中から成約率の高い顧客を数値で表現し、営業活動を支援する機能が優れています。
Salesforceの弱み
Salesforceの導入には、ある程度の「型」のような考え方が存在します。
この「型」を導入する企業側が体現するポテンシャルがない場合、システムがうまく価値を発揮できない場合が多いです。
導入企業側のポテンシャルが必要な「型」の存在
Salesforceは、「ザ・モデル」という書籍に記載されるような、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスの4つの営業プロセスを体系的に管理する「型」を持っています。
この型に当てはめてシステムを運用することで、スムーズな営業活動が実現できます。しかし、この型に当てはめるためには、組織の再編や人員の確保など、導入企業側に相応のパワーが必要です。
そのため、明確に営業の最適化を強く目的としない企業や、型に当てはめることに抵抗がある企業では、現場がシステムを運用できずに導入が終わってしまう可能性もあります。
運用定着の難しさ
Salesforceの導入は、リリース前の設計や構築段階では多くの時間と労力が費やされますが、リリース後に力が抜けてしまい、システムが定着しないという事例が多く見られます。
Salesforceは特に「型」が決まっているため、この定着化のハードルが高い傾向があります。
システムが定着しない場合、導入費用が高額に感じられ、費用対効果が出ない状態に陥ってしまうことがあります。
高額なライセンス費用
Salesforceのライセンス費用は、エディションによって異なりますが、最も標準的なSales Cloudのライセンスでは、1ユーザーあたり月額18,000円が一般的です。
ライトニングプラットフォームスターターという月額3,000円のプランも存在しますが、このプランでは標準オブジェクトの数が少なく、kintoneでいう「アプリ」にあたるカスタムオブジェクトの作成上限が10個までとなっています。
問い合わせ数が月に数件から数十件程度しかない企業の場合、SalesforceのSFA機能の活用効果があまり得られない場合があります。
kintoneの強み
kintoneの強みは、Excelのように誰もが簡単に利用でき、かつ自社に必要な機能を柔軟に拡張できる点です。
Excelのように誰もが簡単に利用可能
kintoneは、Excelを扱うような感覚で誰でも簡単に操作できるため、システム導入のハードルが低い特長があります。
これにより、ITツールに不慣れな従業員でもスムーズに利用を開始できます。
自社に合わせた柔軟なカスタマイズ性
kintoneは、拡張プラグインやプログラミングを用いることで、自社の業務内容やレベル、あるいは特殊な業務にも寄り添ったシステム設計や構築が可能です。
Salesforceのような特定の「型」に縛られず、企業に合わせて使いやすいアプリを構築できるため、確実な生産性向上を目指しやすい特徴があります。
幅広い業務への対応と生産性向上
kintoneは、営業支援だけでなく、有給申請や備品管理といった営業と関係のない分野の業務管理アプリも作成できます。
カスタムオブジェクトという機能を利用し、kintoneは項目をゼロから作成できるため、様々な業務に応じたアプリを構築することが可能です。これにより、業務全般の効率化と生産性向上が期待できます。
kintoneの弱み
kintoneの強みである容易なアプリ構築は、時に弱みにもなります。
安易なアプリ乱立による非効率化
kintoneはアプリの構築が非常に容易なため、将来的な計画や全体像を考慮せずに導入を進めると、後々困るケースがあります。
例えば、機能連携がされていない単一のアプリケーションが乱立し、結果的に業務が複雑になることが少なくありません。
導入段階で「あれもこれも」と多くの業務を盛り込みがちですが、これによってかえって複雑化する可能性もあります。
既存システムとの連携不足による二重業務の発生
kintoneで作成した見積書や請求書を、既存の会計ソフトに連携させずに使用すると、経理担当者が会計ソフトへのデータ入力のために再度同じ情報を手入力するといった二重業務が発生する可能性があります。
これは、システム間の連携を考慮せずにアプリ構築を行った結果、業務に滞りが生じることにつながる典型的な事例です。
Salesforceとkintoneはどちらが良いのか?
Salesforceとkintoneはどちらか一方が優れているという単純なものではなく、導入する企業が置かれている状況や、確保できるリソース、ポテンシャルによって適性が異なります。
企業のリソースと状況による選択基準
例えば、システム導入に十分な期間、コスト、人員といった社内リソースを割くことができる企業であれば、Salesforceの導入が適していると考えられます。
Salesforceは、使いこなすことができれば営業面で絶大な効果を発揮するシステムだからです。全社的に業務改革に取り組み、システムを定着させる強い意志がある企業に向いています。
一方で、スタートアップ企業や、限られたリソースの中で最大限の価値を発揮したいと考える中小企業には、kintoneが適しています。
kintoneは、自社の業務に沿って構築する際のハードルが比較的低く、内製化によってコスト削減を目指す企業にも推奨されます。
共存も可能なシステム活用
Salesforceとkintoneは、できることが重なる部分もありますが、企業側の捉え方によっては共存して利用することも考えられます。
例えば、全体業務の包括的な管理にkintoneを使い、SFAとしてSalesforceを使用するといった導入事例も存在します。部署によって異なるシステムを利用するなど、システムの利用方法に決まりはありません。
まとめ
Salesforceは、営業活動に特化した強力な「型」を持つシステムで、豊富なリソースと明確な目的を持つ企業において、その真価を発揮します。
高額なライセンス費用や定着化の難しさといった側面があるものの、うまく活用できれば絶大な営業効果を得られるでしょう。 一方、kintoneはExcelのような使いやすさと、柔軟なカスタマイズ性を兼ね備えたシステムです。
リソースが限られる企業や、特定の業務に合わせたシステムを内製化したい企業に適しています。
しかし、無計画な導入はかえって業務を複雑化させる可能性があるため、注意が必要です。 自社の状況や目的に応じて、Salesforceとkintoneのどちらか一方を選ぶか、あるいは両方を組み合わせて活用するか、本記事で解説した内容を参考に検討を進めてください。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
コメント