kintone導入担当者に任命されたものの、最適な運用や社内への定着、構築会社との連携、属人化の回避など、現場ではさまざまな壁や悩みに直面するものです。
本記事では、実際の企業事例をもとに、導入背景から運用現場のリアルな課題、解決に向けた具体的なアクションや成功への工夫、そして今後の展望までを詳しく紹介します。
kintone活用を推進する立場の方に、失敗しない導入・運用のヒントと、業務を安定稼働させる実践的な視点をお届けします。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
kintone担当者の役割とは
ポスティング事業を展開するエリアマーケット株式会社では、kintoneの導入と運用を進めています。
同社は社員約10名で構成され、業務委託を含めると約20名が稼働する規模の企業です。
kintone導入の背景には、従来のアナログな営業管理からの転換と、システム化への強い要望がありました。
kintone導入の背景
エリアマーケット株式会社は、案件受注後の管理にファイルメーカーを使用していました。
しかし、営業管理については、紙の資料をフォルダに整理し、上長が確認するというアナログな手法が用いられていました。
この状態をシステムで管理したいという意向から、kintoneの導入検討が始まりました。当初はSalesforceなども候補に挙がりましたが、kintoneを強く推薦する構築会社が存在したため、代表者がkintoneの導入を決定しました。
kintone導入の構想は約2年前に持ち上がり、実際に導入が開始されたのは1年前となります。
kintone担当者への任命
kintone導入当初、エリアマーケット株式会社の代表者が、最初の構築会社(A社)と共に導入プロジェクトを進行していました。
この間、現kintone担当者は個人的な都合により入院しており、導入の状況を把握していませんでした。担当者が業務に復帰した際、代表者がkintoneの構築に苦戦していたため、担当者がkintoneの業務を引き継ぐことになりました。
構築会社A社は、昨年夏から昨年3月にかけて、およそ半年を超える期間にわたりkintoneの構築を担当しました。
A社が構築したkintoneは、全く機能しなかったわけではありませんが、運用するには中途半端な状態で構築が完了しました。
現在の担当者がプロジェクトに加わったのはA社による構築の途中段階であり、システムが3割程度の完成度で引き継がれました。引き継ぎ後、担当者はA社と毎週1回、3時間のリモート会議を実施し、画面共有をしながら開発を進めました。
kintone導入と運用の実際の課題
kintoneの導入と運用は、多くの課題を伴いました。
特に、構築会社との連携、業務要件の複雑な対応、RPA連携の困難さ、kintoneの内製化の難しさ、そして社内への浸透とメンバー間のコミュニケーションが大きな論点となりました。
構築会社との連携における課題
最初の構築会社A社との連携では、担当者が業務フローについて説明し、A社はその内容に基づいて実装を進めました。
しかし、担当者が再び入院した時期に、別の担当者と代表者がA社と連携し、独自の変更を加えた結果、kintoneが正常に動作しなくなりました。この事態により、A社の開発担当者は対応を拒否し、A社との契約は昨年3月に解消となりました。
その後、新たな構築会社B社が昨年4月からプロジェクトに参画しました。B社は、kintoneに対するエリアマーケット側の理解が深まった状態での要望に基づき、開発を進めました。
当初、A社とB社が構築したアプリが混在した状態で昨年7月から運用を開始しましたが、アプリの数が多く、入力項目も過多であったため、現場での使用が困難な状態でした。
A社が作成した部分にはJavaScriptが組み込まれており、B社はなぜそのような構築がなされたのか、意図を読み解くことが難しいと述べました。
このため、今年2月にB社はA社が構築した部分を全て破棄し、kintoneのゼロからの再構築に着手しました。B社は現在も新しいアプリの作成を継続しており、案件ごとの費用で連携が続いています。
複雑な業務要件への対応
ポスティング業務には、非常に多くの変動要素が存在します。例えば、一つの顧客から複数の案件を受注する場合があります。
その際、配布するエリア、チラシのサイズ、配布部数によって見積もりの内容が大きく変わってきます。
加えて、一つの案件に対して複数の外部協力会社に発注することもあり、これらの情報を集計する作業が複雑であり、現状ではうまく構築できていないという課題があります。
これらの複雑な要望を構築会社に伝えても、必ずしも期待通りに構築されるわけではありません。特に、請求処理への連携において、現在も課題を抱えています。
担当者はB社が指示された内容に忠実に構築していると認識していますが、B社が提案型の構築会社ではないため、エリアマーケット側の知識不足から、kintoneにとって最善の構築案が提示されないという難しさがあると感じています。
RPA連携の困難性
社長からは、RPAを導入し、チャットワークに入力された情報から自動で受発注業務を完結させたいという要望がありました。
kintone担当者はRPAに関する調査を実施し、A社の別事業部にRPA導入を依頼した時期もありました。しかし、ポスティング業務は変数が多いため、RPAが情報を正確に認識することが難しいという問題に直面しました。
具体的には、全国の様々な協力会社から提出される配布報告書のフォーマットがそれぞれ異なるため、RPAがそれらを自動で取得し、kintoneに登録し、さらに自社のフォーマットに統合することが非常に困難であると判明しました。
また、エリアの区切りをRPAが正確に判断することができない点も課題として挙げられました。これらの困難さから、RPAによる自動化は中止され、現在は手動での運用に戻っています。
kintone内製化の難しさ
kintoneはノーコードツールとして、手軽に導入できるイメージがあるかもしれません。しかし、完全に自社内で運用・開発を進めることは容易ではありません。
簡単なアプリは自社で作成できたとしても、システムをさらに拡充しようとすると、プラグインの導入やJavaScriptによるカスタマイズが必要となり、専門的な知識が求められます。
結果として、多くの企業は構築会社への依存を余儀なくされ、内製化が進まない状況が生まれることがあります。構築会社が新しいプラグインを導入した場合でも、その設定内容が担当者にとって不明瞭な状態となり、理解できないケースが見られます。
これにより、担当者は継続的に構築会社に依頼することになります。kintone導入の際には、内製化を目指すのか、それとも特定の目標達成を優先するのかによって、連携する構築会社を選ぶ基準が変わるため、この点を考慮することが重要です。
社内への浸透とコミュニケーション
kintoneを社内に浸透させることも、多くの企業にとって課題となります。エリアマーケット株式会社のように若いメンバーが多い企業では、システムが新しくなっても、現場から積極的に改善の意見が出にくい傾向があります。
kintone担当者は、システムの使い方に関する質問には対応できますが、現場がさらに使いやすくなるための具体的な提案を引き出すことに難しさを感じています。
そのため、担当者自身が現場の意見を積極的に聞きに行く努力が不可欠となります。
現在、多くのメンバーが協力的であるため、フィードバックを得ることはできていますが、担当者は将来的にはkintoneの業務を他のメンバーに引き継ぐことを考えており、後任がkintoneを嫌いにならないような引き継ぎを行う必要性を感じています。
現時点では、kintoneの現在の詳細な設定や運用状況を熟知しているのは担当者のみであり、後任への引き継ぎは差し迫った課題です。
kintone担当者が意識すべき視点
kintone担当者として、システム導入や運用において意識すべき点がいくつか存在します。これらの視点を持つことで、kintoneの活用をより円滑に進めることができるでしょう。
属人化を避ける重要性
kintoneの運用が特定の一人に集中してしまうと、その担当者が不在になった場合や、担当者が交代する際に、他のメンバーがシステムの現状を把握できなくなり、一から理解し直す手間が生じます。
このような属人化を避けるためには、kintoneの仕組みを複数のメンバーが理解できる体制を構築し、担当者を複数名配置することが重要です。現在、担当者は後任への引き継ぎを進めている最中です。
kintoneの業務が後任にとって負担とならないよう、あるいはkintoneを嫌いにならないよう、伴走しながら引き継ぎを行うことを意識しています。
担当者自身も、かつてはkintoneの担当業務に対して「嫌だ」と感じた時期があったと述べています。これは、予期せぬ形で担当になったことや、社長からの要望と現実との乖離に直面したためです。
全ての業務をkintoneに集約しない判断
kintoneは非常に汎用性の高いツールですが、全ての業務をkintoneに集約しようとすることは避けるべきです。かえって作業が無駄になる可能性もあります。
kintone担当者は、どの業務がkintoneに適しており、どの業務は別の手段で進めるべきかを適切に判断する視点を持つ必要があります。この判断は、担当者がkintoneについて理解を深めることで可能になります。
まずは実践することの意義
kintoneがどのような業務に向いているのか、あるいは向いていないのかを正確に判断するためには、実際に試してみることが重要です。
机上で考えるだけでなく、まずは実践し、その結果からkintoneの適性を見極めることができます。
kintone担当者の中には、行動をためらってしまう人もいますが、まずはやってみるという姿勢が、判断能力を養う上で不可欠となります。
kintone導入後の展望
kintoneの導入と運用を進めてきたエリアマーケット株式会社は、今後のkintone活用について明確な展望を持っています。
営業・案件管理の現状と今後の課題
現在、kintoneでの営業管理は一定の形をなしていますが、さらに無駄なく管理していきたいという要望があります。
特に、集計機能のさらなる改善が今後の課題として挙げられます。
現状では、集計機能が十分ではないため、データ分析や請求書作成への活用が限定的です。今後は、経理システムであるMoney Forwardとの連携も検討しています。
ポスティング業務におけるkintoneの可能性
エリアマーケット株式会社は、単にチラシを配布するだけでなく、お客様への反響数をフィードバックし、そのデータに基づいて研究を行うという独自の強みを持つポスティング会社です。
将来的には、ポスティングの実績データや研究データをkintone上に蓄積し、これを分析に活用することで、顧客に対してより幅広い事例や提案ができるようにしたいと考えています。
さらに、顧客が自身のポスティング実績をウェブ上で閲覧できるようなマイページ機能の実現も、kintoneの可能性として検討しています。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
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