営業支援システムの導入を検討する際、Salesforceとkintoneのどちらを選ぶべきか悩む企業は少なくありません。両者は優れたツールですが、初期費用や月額費用、機能面で大きな違いがあります。
本記事では、50人規模の企業を想定し、Salesforceとkintoneの具体的なコスト比較を行います。
単なる費用比較だけでなく、投資対効果の観点から自社に最適なシステムを選定するためのポイントもご紹介しますので、参考にしてください。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
Salesforceとkintoneの全体的なコスト比較
Salesforceとkintoneのどちらがコスト面で優れているかという問いに対し、純粋な投資コストで見た場合、Salesforceの方が相対的にコストは高くなる傾向があります。
しかし、これは投資対効果という観点から見ると一概には言えません。Salesforceとkintoneはそれぞれに特徴があり、利用する企業の状況によってその価値は異なります。
特にSFAとしての利用を考える場合、Salesforceは最も得意とする領域であり、投資コストに対して大きな価値を発揮すると考えられます。
システム選定において、何に重きを置くかが重要なポイントです。
kintoneとSalesforce|具体的な導入・運用費用の比較
具体的な導入・運用費用を比較してみましょう。
- 比較条件
- kintoneの初期構築費用と月額費用
- Salesforceの初期構築費用と月額費用
具体的な企業の条件を仮定し、kintoneとSalesforceの初期費用とランニングコストを比較して解説します。
比較条件
比較の前提となる企業は、ウェブサイト制作会社で従業員数は50人、導入する人数は営業メンバーと役員を含む20人と仮定します。
主な要件はテレアポ管理と案件管理であり、将来的にはカスタマインなどの要件も加わる可能性を想定します。
kintoneの初期構築費用と月額費用
kintoneをこの要件で導入する場合、初期構築費用は約100万円から300万円程度と見積もられます。平均的には200万円前後になるケースが多いです。
月額費用は、ライセンス費用とプラグイン費用で構成されます。
項目 | 費用 |
kintoneライセンス費用 | 1人あたり月額1,500円から2,000円で、20人分だと月額30,000円から40,000円 |
KrewDataリアルタイム | 月額18,000円 |
krewdashboardスタンダード | 月額20,000円 |
これらの合計で、最低月額は68,000円です。 さらに、要件によっては以下のプラグインが追加される可能性があります。
項目 | 費用 |
KrewDataスケジュール | 月額12,000円 |
Customine | 月額18,000円 |
これらの追加費用を含めると、月額費用は68,000円から98,000円の範囲になるでしょう。納期は約2ヶ月と想定されます。
kintoneでSFAのようなシステムを構築する場合、Salesforceの機能に近づけるため、プラグインの導入が厚めになる傾向があります。
また、要件の深さによって費用は大きく変動します。特にSFAやステータスの条件分岐による連動、運用フローなど、要件次第でプラグインの範囲も変わるでしょう。
コンサルタント側は、顧客がkintoneへの理解を深めながら段階的に構築を進めるアプローチを取ることもあります。
初期段階では、最悪のケースを想定して多めにプラグインや機能を提案するケースも少なくありません。
これは、提案中に社内の意思決定が困難な場合や、ベンダー側の工数が増えるのを避けるためです。
Salesforceの初期構築費用と月額費用
っっっっq
Salesforceをこの要件で導入する場合、初期構築費用は約100万円から250万円程度と見積もられます。
月額費用は、エンタープライズエディションで計算した場合、以下のようになります。
項目 | 費用 |
Sales Cloudライセンス | 1人あたり月額18,000円で、20ライセンス分だと月額390,000円 |
プレミアサクセスプラン | ライセンス費用の30%が必要となり、月額121,400円 |
これらの合計で、月額費用は511,400円となります。
Salesforceの初期構築費用が抑えられる理由
Salesforceの初期費用が想像よりも安いと感じるかもしれません。
その理由として、Salesforceには「オブジェクト」という考え方があり、これはkintoneの「アプリ」に相当します。
オブジェクトには「標準オブジェクト」と「カスタムオブジェクト」の2種類があります。
標準オブジェクトは、Salesforceのライセンス契約時に最初から実装されている、いわゆるパッケージ化されたオブジェクトです。
kintoneのサンプルアプリが最初から含まれているようなイメージです。
この標準オブジェクトには、取引先マスター、取引先担当者マスター、相談マスターなど、SFAに必要な機能が全て内包されています。
そのため、構築ベンダー側がゼロからアプリを作成する必要がないため、構築工数が少なく済み、kintoneよりも初期費用が抑えられる傾向があります。
SalesforceはSFAを中心に利用する企業が多いため、標準オブジェクト内で要件が完結する場合や、それをベースに構築する場合に費用を抑えられるのが特徴です。
ただし、標準オブジェクトにない特定のマスター(例:紹介先マスター)が必要な場合は、カスタムオブジェクトを容易に作成でき、その費用として100万円から250万円程度の初期費用が発生します。
Salesforceのメーカー自体は構築を行いません。代理店によって初期費用は大きく変わる可能性があります。
Salesforceもノーコード・ローコードツールであり、SFAの要件であれば、そこまで個別開発を必要としないケースが少なくありません。
kintoneとSalesforceの費用比較表
項目 | kintone | Salesforce |
初期費用 | 100万円から300万円程度 | 100万円から250万円程度 |
月額費用 | 68,000円から98,000円程度 | 511,400円 |
納期(目安) | 約2ヶ月 | 情報なし |
特徴 | プラグインで機能拡張、要件に応じた柔軟性 | 標準オブジェクトが充実、SFA機能が内包 |
単純な月額費用で見ると、kintoneよりもSalesforceの方が5倍から8倍ほど高くなる場合もあります。
kintoneとSalesforceのメリット・デメリット
kintoneとSalesforceのメリット・デメリットを紹介します。
- kintoneのメリット
- kintoneのデメリット
- Salesforceのメリット
- Salesforceのデメリット
システム導入を検討する上で、それぞれのメリットとデメリットを理解することは重要です。
kintoneのメリット
kintoneの最大のメリットは、システムの柔軟性が非常に高い点です。
システム導入後、運用中に業務に沿わない部分が見つかったり、取引先との関係で業務自体が変わってしまったりすることはよくあります。
そのような際でも、kintoneでの構築であれば、業務に合わせてアプリを容易に作り変えられます。
kintoneのデメリット
kintoneの最大のデメリットは、高度な要件への対応が難しい点です。
例えば、SFAにおいてマーケティングオートメーション(MA)ツールとの連携やウェブトラッキングの要件が出た場合、kintoneは標準機能としてはこれらの機能を持ちません。
そのため、他のツールとの連携を検討したり、個別開発を導入したりする必要があり、結果的にコストが増加する可能性があります。
kintoneはSFAに特化しているわけではないため、MA領域などの機能は特に不足しています。
Salesforceのメリット
Salesforceのメリットは、SFAに必要な機能が全て網羅的に内包されている点です。さらに、ワンプラットフォームで利用できるため、高度な要件への対応力が非常に高いです。
Salesforceは、時間と費用をかけることで、顧客の要件に対して優れた価値を発揮します。
Salesforceのデメリット
Salesforceのデメリットとして挙げられるのは、コストの部分です。Salesforceは機能が非常に充実しており、利用する企業に対して確かな価値を発揮するツールではあります。
しかし、その機能や価値が自社にとってどのような恩恵(売上や利益など)をもたらすのかが明確になっていないまま利用すると、コストだけが増大し、費用が高いと感じてしまう可能性があります。
kintoneとSalesforceのシステム導入における重要なポイント
kintoneとSalesforceのどちらにも共通して言えることですが、システムはあくまで仕事の補助をするものです。
システム導入を成功させるためには、利用する側が何に困っていて、何を助けてほしいのかを明確にすることが非常に重要です。
単にコスト比較をするだけでなく、どちらのシステムが自社の費用対効果を高められるかを検討すべきでしょう。
Salesforceを効果的に活用するためには、Salesforceの型に業務を合わせて運用し、データを蓄積することが求められます。
その上で、蓄積したデータをうまく活用することが重要です。
Salesforceは、kintoneのクロス集計表のようなグラフをさらに多軸でレポート作成やダッシュボード化することが得意です。
kintoneではクロス集計の軸が3つまでという制限があるため、それ以上の多軸での集計や複雑なデータ加工にはクルーデータやクルーダッシュボードといったプラグインが必要となり、構築費用やランニング費用がかかります。
Salesforceは、営業目線で必要な機能があらかじめシステムに組み込まれています。
kintoneの将来的な伸びしろ
kintoneとSalesforceは、どちらも優れたシステムです。特にkintoneは、日本の中小企業との親和性が非常に高いと考えられます。
中小企業はコストやリソースが限られている中で、いかに高いパフォーマンスを発揮するかが共通の課題です。
kintoneは、そのような企業に寄り添いやすいシステムであり、この点が大きな伸びしろとなるでしょう。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
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