「kintoneを導入したものの、思うように効果が出ない」
「運用がうまくいかず、システムが定着しない」
上記のような悩みを抱えている企業も多く、kintoneの導入から運用、定着化には多くの課題が伴います。
この記事では、実際にkintone導入を経験した担当者の失敗事例を元に、導入前、構築、運用、定着化の各フェーズで直面した課題とその克服法を詳しく解説します。これらの失敗を避けるための実践的な対策も紹介しているので、kintoneをこれから導入する企業にとっては非常に役立つ情報です。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
kintone導入における主な失敗事例と苦労
kintoneは多くの企業で活用されているツールですが、導入から運用、定着化の過程で様々な課題に直面する場合があります。
ここでは、実際にkintoneの導入と推進を経験した担当者の声に基づき、各フェーズで発生した具体的な失敗事例や苦労について解説します。
導入前のフェーズで直面する課題
kintone導入前の段階では、主に組織のルールや費用の面で困難がありました。
特に、大規模な組織では、これまでオンプレミス環境で運用されてきたシステムが多いため、クラウドサービスであるkintoneのセキュリティ基準や運用ルールの策定に多くの時間と労力を要しました。
企業の情報システム部門やセキュリティ部門と連携し、情報の取り扱いに関する詳細な審査をクリアする必要がありました。
また、kintone導入の費用対効果を明確に算定する点も課題でした。
kintoneは基幹システムというよりも周辺業務の改善に用いられるため、特定の業務で削減できる具体的なコストを積み上げることが難しいからです。当初は、この点が予算獲得における苦労につながりました。
構築フェーズでの困難
kintoneアプリの構築段階では、利用者の業務フローとkintoneの機能との整合性が課題となることがありました。
kintoneは簡単にアプリを作成できる特徴を持つため、現場の担当者が業務フローを十分に整理せず、ただ既存の業務をkintoneに移行しようと試みるケースがありました。
このような場合、技術的な問題よりも、業務フローそのものの見直しが不足しているため、期待通りの成果が出にくい状況が生じました。
さらに、導入推進側が全てのアプリを構築してしまうと、導入推進者が将来的にメンテナンスの担当者となってしまう危険性がありました。
kintoneのコンセプトは利用者が自分たちで業務改善を進める「自走」にあるため、このバランスの維持が重要でした。
運用フェーズでの課題
kintoneの運用が始まると、管理者側の業務負担が増加する課題に直面しました。
導入推進部門がkintoneの管理者を務める場合、情報システム部門やセキュリティ部門の業務範囲であるプラットフォームのセキュリティ管理や不適切なデータの監視など、本来の担当範囲を超えた業務まで担うことになりました。
また、利用者が試作したものの、そのまま放置されてしまう「お試しアプリ」の増加も運用上の大きな負担でした。
育成の側面から全利用者にアプリ作成権限を付与していたため、どのアプリが必要で、どれが不要なのかの判断が困難になりました。
現場からは、せっかく作成したkintoneアプリが利用者に受け入れられず、「以前のExcelやAccessの方が良かった」という声が上がることもありました。
これは、アプリ作成者が業務最適化を考慮せず、独りよがりな設計をしてしまう場合に発生することがあります。
定着化・内製化における障壁
kintoneの定着化・内製化の段階では、利用者がkintoneの基本的な機能は理解できても、自身の業務にどのように適用すればよいか具体的なイメージがわかないという課題がありました。
研修を実施しても、kintoneの概念は理解できても、それを実際の業務改善に結びつける発想を持つまでには至らないケースが見られました。
また、一部の熱心なkintone利用者が、kintoneを万能ツールととらえ、どんな業務でも力技でkintoneに移行しようとする傾向が見られました。
このような場合、業務の性質上kintoneが最も適したツールではないにもかかわらず、無理な導入を進めてしまい、結果的に非効率な運用に陥る可能性がありました。
kintone導入の初期段階では、目に見える成果が出にくい期間がありました。特に最初の1年間は「体験」としての利用が主であり、目立った効果測定が難しい状況でした。
これにより、導入費用に見合う成果が出ているかどうかの判断が難しく、次年度の更新時に課題となりました。
kintone導入の失敗を避けるための対策
kintone導入における様々な課題を乗り越え、成功に導くためには、以下の対策が有効です。
組織ルールと費用対効果の明確化
導入前に、クラウドサービスの利用に関する組織全体のセキュリティポリシーや運用ルールを詳細に検討し、関係部門と連携して合意形成を図る必要があります。
プラグインについても、事前に利用範囲やセキュリティ基準を設け、承認されたもののみを使用するルールを確立します。
費用対効果の算出が難しい周辺業務への導入では、kintoneがもたらす直接的なコスト削減効果だけでなく、人材育成やデジタル文化の醸成といった定性的な価値も合わせて提示します。
全社的なデジタル化計画やDX推進のミッションと連動させることで、予算の承認を得やすくなります。
業務フローの事前検討と段階的な推進
アプリ構築に際しては、まず既存の業務フローを詳細に分析し、kintone導入によってどのように業務が改善されるか、その全体像を明確に把握します。単純なツールの置き換えではなく、業務そのものの最適化を目指します。
利用者が自らアプリを作成し、業務を改善していく「自走」を促すためには、最初から全てを任せるのではなく、導入推進側が初期段階で手本となるアプリを一部作成し、kintoneで何が出来るかを体験させることが有効です。
その後、徐々に利用者に作成権限を移譲し、主体的な活用を促します。
利用者との適切な距離感とアドバイス
利用者が作成したアプリが現場で使われない場合、その原因を深くヒアリングし、独りよがりな設計になっていないか、本当に業務最適化されているかを確認します。
また、kintoneだからこそ実現できるプラスアルファの機能や価値を提示し、利用メリットを訴求することで、利用者のモチベーションを高めます。
「kintoneを使いこなす人材」を社内で育成するためには、システムやツールに詳しい人よりも、まず業務を深く理解している人をDX推進の担当者に置くことが有効です。
業務理解があるため、現場の課題に寄り添いながらkintoneの活用方法をアドバイスできるからです。
継続的な人材育成と文化醸成
kintoneの基本的な使い方だけでなく、具体的な業務への応用例や成功事例を継続的に共有する仕組みを構築します。
社内での発表会や成功事例の共有文化を活用し、他の部署での成功体験を参考にしてもらうことで、新たな活用アイデアが生まれやすくなります。
また、kintoneに過度な期待を抱き、どんな業務でもkintoneで解決しようとする利用者に対しては、その熱意を尊重しつつ、建設的な方向へと導きます。
彼らのアイデアを受け止めながら、kintoneの得意な領域とそうでない領域を理解させ、全体として最も良い解決策を一緒に考える姿勢が重要です。
まとめ
kintoneの導入は、華やかな成功事例の裏で、多くの担当者が様々な失敗や苦労を経験しているのが実情です。
しかし、それらの課題を乗り越えることで、kintoneは単なる業務改善ツールに留まらず、社内のデジタル人材育成や自律的な業務改善文化の醸成に大きく貢献します。
kintoneは「手段の1つ」であり、最終的に「何を成し遂げたいのか」という目的意識を明確に持つことが成功の鍵です。
この記事で紹介した具体的な失敗事例と対策を参考に、貴社のkintone導入を成功に導き、業務プロセス全体の変革を実現してください。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
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