kintoneのテスト運用は、システムを実稼働させる前にその機能性や使い勝手を確認し、課題を特定する上で重要です。
この段階で生じる具体的な問題点と、それらに対処するための解決策を理解し、適用することは、システムの円滑な運用につながります。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
kintoneのアプリ構造を理解する重要性
kintoneのアプリ構造を正しく理解することは、データの正確な管理と活用に直結します。
テスト運用においては、案件管理と制作管理のように、複数のアプリが連携する場面での認識統一が必要です。
案件管理と制作管理の役割を明確にする
案件管理と制作管理のアプリ構造について、運用側とシステム設計側での認識を合わせる必要があります。
例えば、YouTubeやLINE、Instagramの運用を顧客ごとに受けている場合、案件管理を「YouTube」といった案件とし、その下に制作管理で「8月に納品した動画」のような詳細を入れていく考え方が挙げられます。
ブースデザインの案件に付随するチラシ修正のような追加作業も、本来は案件管理のレコードの下に制作管理として追加していく形が正しい運用となります。
現在の運用で案件管理のレコードがバラバラになっている場合、運用者が構造を理解した上で意図的に分けているのか、またはアプリのレコードを増やすべき認識が不足しているのかを確認する必要があります。これにより、システムの正しい運用を促します。
案件の分類と統一の必要性
案件の分類方法を統一することも重要です。
例えば、「P制作」がSNS運用とWEB制作の両方に該当するケースなど、担当者の判断で分類が曖昧になる場合、データとして活用できない可能性があります。
案件管理のジャンルは、データ活用ができるように統一した分け方を適用する必要があります。
例えば、「Instagram運用」と「SNS運用」のように似た項目がある場合、ドロップダウンで「Instagram運用」「TikTok運用」のように明確に選択肢を定める方が、入力のばらつきを防ぎ、後々のデータ集計に役立ちます。
データ入力の課題とその対策
kintoneのテスト運用では、データ入力に関する課題が頻繁に発生します。
これらの課題へ対処するためには、入力ルールを明確化し、必要に応じてシステムの機能でサポートする方策を講じる必要があります。
請求日の管理方法を統一する
請求日の管理方法には注意が必要です。動画制作シートでは「請求月」で管理している一方、案件管理シートでは「請求発行日」が項目として存在します。
請求書の発行には日付のデータが適しており、売上基準の元になる可能性もあります。理想としては「年月日」で入力する形が望ましいです。
現場の運用では「月」単位で入力する慣習があるため、「9月の何日を選択したらよいのか」と運用者が戸惑わないよう、移行期間のサポートや教育が欠かせません。
月の末日に発行する運用であれば、その月の末日を「請求発行日」として入力させるなどのルールを設定し、教育を通して現場へ浸透させる必要があります。
動画制作シートの入力項目を見直す
動画制作シートは情報量が多く、グループ化された項目に全て入力する運用が求められます。
テスト運用を通して、本当に必要な項目か、または入力の負担を軽減できる項目がないかを確認し、見直しを検討することも重要です。
例えば、動画制作アプリと進捗管理アプリで重複するステータス項目がある場合、それらを統合できるかを確認します。スマートフォンの入力ではグループが見つけやすい色で表示される特性も活用できます。
入力漏れを防ぐための仕組み作り
入力漏れはヒューマンエラーで発生する可能性があり、これを防ぐための仕組み作りが求められます。
スプレッドシートで行っていたような、空白箇所の表示変更や通知機能はkintoneでも実装できます。レコードが登録された際に、特定の担当者に通知が飛ぶように設定し、誤りがあればコメントで修正を促すことで、入力の教育を進められます。
また、特定の条件で絞り込みをかけた一覧を作成し、本来表示されないはずのレコードが残っていることで入力漏れに気づける方法も有効です。
例えば、「納品予定日」が過ぎているのに「ツイート本文」が空白のレコードがあった場合、担当者に通知を飛ばす設定も可能です。
過去データの効率的な更新方法
過去のデータを効率的に更新する方法も理解しておく必要があります。案件のジャンル変更など、過去のレコードを一括で変更する場合、CSVでのデータ入出力が利用できます。
レコードをCSV形式で一度出力し、CSV上でデータを変更してからkintoneに上書き取り込みをすることで、過去のデータも一括で更新できます。
CSV出力時には、必要な項目を選択して出力できるため、面倒な入力を減らせます。kintoneのレコード番号をキーとして、既存のレコードは上書き、存在しないレコードは追加という形で取り込みが可能です。
kintoneを活用したデータ分析と連携
kintoneは、登録されたデータを分析し、他のシステムと連携させることで、業務全体の効率化を図る基盤となります。テスト運用では、これらの機能の有効性を評価します。
売上分析に売上明細アプリを活用する
制作管理アプリで作成した請求情報を元に合算請求書を作成する場合、間に「売上明細アプリ」を挟むことで、売上データの分析が容易になります。
売上明細アプリに全売上データを区分別に集約することで、売上分析の主要な場所として機能します。また、売上明細アプリのデータを加工し、PL(損益計算書)などの形式で出力することも可能です。
kintone標準機能でのグラフ作成
kintoneには標準機能でグラフを作成する機能が備わっています。例えば、請求発行日を基準に月別に集計し、案件の種類や売上金額でグラフを作成できます。
これはExcelのピボットテーブルグラフに似た機能で、保存すればリアルタイムで最新データが表示されます。標準機能では表現に限りがある場合もありますが、プラグインを使用することで、より複雑なグラフ表示や分析も実現できます。
会計システムとの連携による業務改善
kintoneでデータ管理が進めば、次の段階として会計システムとの連携も検討できます。会計システムと連携することで、入金管理の負担を大きく減らせます。
現状の請求書発行が月末に間に合わないような状況であっても、システム連携により大幅な業務改善につながる可能性があります。
運用を定着させるためのポイント
kintoneの導入とテスト運用を成功させるためには、現場での運用定着が不可欠です。管理者による継続的なサポートと、現場がストレスなく使えるような配慮が重要となります。
管理者による入力状況の確認と教育
kintoneの運用を軌道に乗せるには、管理者やリーダーが率先してシステムを理解し、スタッフへ教育を行う姿勢が求められます。
スタッフは管理者から教えられたことの4割程度しか習得できない感覚があるため、管理者が完全に理解した上で現場へ落とし込む必要があります。
最初の段階では入力ミスが発生する可能性が高いため、管理者が通知を受け取り、適宜コメントで修正指示を出すなど、教育体制を整えることが重要です。
現場が使いこなせるための工夫
現場の運用者が迷いなく入力できるように工夫も凝らします。例えば、案件名のような自由記述の項目は、入力ミスや分類のばらつきの原因になることがあります。
代わりに、選択式のドロップダウンリストを利用することで、入力の精度を高められます。リストにない新しい案件が発生した場合は、管理者が選択肢に追加する運用とするか、自由記入欄を特定の条件下でのみ表示するなどの設定を検討します。
外部連携によるkintone活用の拡張
kintoneは、外部ツールやサービスと連携することで、その活用の幅を大きく広げられます。テスト運用を通して、どのような外部連携が業務にさらなる価値をもたらすかを検討します。
顧客向けマイページ機能の導入
kintoneに登録した進捗情報を顧客と共有するために、マイページ機能の導入を検討できます。
kViewerやじぶんページなどのプラグインを利用すると、kintone内の特定の情報だけを顧客向けの専用ページとして表示できます。これにより、顧客はいつでも自分の案件の進捗状況や動画の確認が可能となり、安心感を提供できます。
自分ページでは、顧客がコメントを投稿し、それに対して社内でやり取りする機能も備わります。これは、X(旧Twitter)投稿の進捗管理のように、顧客が修正内容を直接入力できる場面でも活用できます。
自動コンテンツ生成によるSEO強化
kintoneのデータは、自動コンテンツ生成にも活用できます。
例えば、動画の納品が完了した際に、kintoneに登録された情報をトリガーとして、WordPressなどのCMSにブログ記事を自動投稿する仕組みを構築できます。
担当者が動画の制作意図やコメントをkintoneに入力しておけば、それがブログ記事に反映され、コンテンツが自動的に増えていきます。
これにより、毎日多くのコンテンツが生成され、SEO強化につながります。顧客の声や施術の感想などをkintoneに入力することで、それらを活用したメディアを自動生成し、地域のSEOを強化するといった応用も可能です。
まとめ
kintoneのテスト運用は、システムを実用化する上で多くの課題を洗い出す機会となります。
アプリ構造の認識統一、データ入力ルールの整備、入力漏れ対策、そして効率的なデータ更新方法の確立は、安定したkintone運用への第一歩です。
さらに、売上分析、会計システム連携、顧客向けマイページ、自動コンテンツ生成といった外部連携は、kintoneのビジネスへの貢献度を高める要素となります。
テスト運用で得られた知見を元に、これらの機能を段階的に導入し、kintoneを最大限に活用できるよう改善を続けることが重要です。kintoneは導入後も継続的な改善が可能なため、課題を一つずつ解決しながら運用を成熟させていくことが求められます。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
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