建設業界では、顧客管理・施工管理・原価・勤怠まで幅広い業務を効率化し、一元化したいというニーズが高まっています。
しかし、現場ごとに複数のシステムを併用していると、データの入力や集計が煩雑になり、会社全体の経営分析や現場管理が難しくなることも。
本記事では、建設業に特化した「kintone」と「ANDPAD」の機能・特長・弱みを比較し、それぞれの強みを活かした最適な連携活用法をご提案します。
両者を組み合わせて業務データを一元管理し、効率的かつ柔軟な現場運営を実現するための導入ステップも分かりやすく解説します。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
建設業におけるkintoneとANDPADの役割
kintoneとANDPADは、建設業の業務管理を支援するソフトウェアです。
これらのツールは異なる得意分野を持つため、それぞれの特長を理解し、企業の具体的な業務フローに合わせて活用することが重要です。
両者を適切に組み合わせることで、業務の効率化とデータの一元化を実現できます。
建設会社の現状と業務管理の課題
現在、外壁塗装などのリフォーム工事を行う多くの建設会社では、業務管理において複数のソフトウェアが使用されている状況がみられます。
顧客からの問い合わせがあった際には顧客管理ソフトに登録し、現地調査ではANDPADを用いて写真管理を行うなど、業務の各段階で異なるツールが使われています。
見積書作成には別のツールを使い、工事が完了した後の粗利管理も別のソフトウェアで行われます。
この複数のソフトを併用する体制には、いくつかの課題が存在します。まず、各ソフト間のデータ連携が不足しているため、データ入力の手間が増え、引き継ぎが複雑になる可能性があります。
たとえば、日報はANDPADで現場単位で入力されているものの、個人ごとの集計ができません。
そのため、従業員一人ひとりの勤怠や作業実績を把握するためには、別途月報などの形で手作業での入力や集計が必要な場合も生じます。さらに、自社の社員の勤怠管理も今後、オンラインでの適切な管理が求められています。
ANDPADの特長と限界
ANDPADは、建設現場の管理において特定の強みを発揮しますが、一部の業務では限界も存在します。
- ANDPADが得意な領域
- ANDPADが苦手な領域
それぞれ解説します。
ANDPADが得意な領域
ANDPADは、写真管理に優れています。特に現場単位での写真管理が得意であり、多くの建設会社で現場の状況記録に活用されています。
お客様の会社では、約3年間ANDPADを施工管理アプリとして利用しており、その使いやすさから現場担当者や外注先も写真のアップロードに慣れています。
ANDPADが苦手な領域
ANDPADは、データの集計機能が不足しています。工事単位や将来的な集計を行うことはできません。
そのため、会社全体の経営判断に必要な詳細なデータ分析や、工事以外の顧客管理、粗利管理といった全社的な業務管理には不向きです。
また、ANDPADの施工管理アプリに顧客管理などのオプションを追加すると、月額料金が非常に高額になる場合があります。
月額10万円程度の費用が発生するケースも指摘されています。kintoneへの写真データ移行には時間的な課題や、ユーザーが慣れるまでの不安が存在する可能性も考えられます。
さらに、ANDPADのメーカーは、他社システムとの連携に対して消極的な傾向がみられる場合があります。
kintoneの多機能性と適用範囲
kintoneは、汎用性の高いプラットフォームとして、建設業の多様な業務管理に対応できます。
- kintoneが得意な領域
- kintoneが苦手な領域
それぞれみていきましょう。
kintoneが得意な領域
kintoneは、顧客管理、施工管理、粗利管理など、複数の業務を一元的に管理する基盤となります。
データ集計機能に優れており、工事ごとの売上、原価、粗利などを自動で集計できるため、経営状況の把握に役立ちます。
企業の具体的な業務フローや要望に合わせて、柔軟にアプリを構築できる点も大きな特長です。帳票出力の自由度も高く、見積書や報告書をExcelやWord形式で出力し、必要に応じて微修正を加えることも可能です。
さらに、DropboxやOneDriveといった外部のクラウドストレージサービスと連携できるため、写真やドキュメント管理の利便性を向上させることができます。
勤怠管理アプリや自社リソース管理アプリを構築することで、従業員一人ひとりの詳細な勤務状況や作業時間を把握し、個人別の原価集計にもつなげることが可能となります。
kintoneが苦手な領域
kintoneは、特定の定型フォーマットに沿った写真付き報告書の作成には向いていない場合があります。
また、スマートフォンの画面でkintoneのテーブル形式の入力を試みると、画面が見づらく、縦に長くなるため入力しにくいと感じる場合があります。
iPadなどのタブレット端末であれば、比較的見やすく操作できます。建設業特有の複雑な見積書、例えば表紙があり、複数の工事内容が細かく内訳されているような形式の見積書を作成する際には、kintone単体では対応が難しい場合もあります。
その場合、従来通りExcelなどで見積書を作成し、PDF形式でkintoneに添付するといった運用が推奨されます。
kintoneとANDPADの連携による相乗効果
kintoneとANDPADは、それぞれの得意分野を活かすことで、建設業の業務管理において相乗効果を発揮します。
- ANDPADの強みを活かす連携方法
- kintoneを軸とした業務一元化の進め方
それぞれ解説します。
ANDPADの強みを活かす連携方法
ANDPADが持つ写真管理の強みを最大限に活かす方法として、ANDPADで管理している写真のリンクをkintoneの工事台帳に直接貼り付ける運用が可能です。
これにより、kintoneのアプリ上でANDPADの該当する現場の写真にすぐにアクセスできるようになり、写真管理はANDPADに任せつつ、kintoneでプロジェクト全体の進捗やデータを一元管理できます。
kintoneを軸とした業務一元化の進め方
複数のソフトウェアを使いこなす手間や、担当者の頭の中にある情報が引き継ぎにくいという課題を解決するために、kintoneを軸に業務を一元化することが推奨されます。
導入の際には、段階的な進め方を検討します。まず、顧客案件管理、工事台帳、自社リソース管理といった基幹となるアプリから構築に着手し、kintoneの操作に慣れてきた段階で、報告書作成など、より高度な機能や複雑な業務へと適用範囲を広げていくことができます。
kintoneの添付ファイル機能を使用すれば、PDF形式で作成された見積書や各種書類を工事台帳などに紐付けて保存することができ、データの散逸を防ぎます。
kintoneによる具体的な業務管理アプリの例
kintoneを導入することで、建設業の多岐にわたる業務をアプリとして構築し、管理できます。
- 顧客案件管理アプリ
- 工事台帳アプリ
- 自社リソース管理アプリ
- 粗利管理アプリ
- 写真・ドキュメント管理の補助
それぞれのアプリについてみていきましょう。
顧客案件管理アプリ
工事受注に至る前の段階の案件情報を管理できます。顧客からの問い合わせから商談、見積もり提出までのプロセスを記録し、進捗を可視化します。
工事台帳アプリ
各工事の情報を集約する中心的なアプリです。
このアプリでは、工事現場ごとの売上、原価、粗利が自動的に集計される仕組みを構築できます。これにより、工事ごとの収益性を容易に把握できるようになります。
自社リソース管理アプリ
従業員一人ひとりの日報や勤怠を管理するアプリです。現場監督がまとめる形式の日報だけでなく、従業員個人がその日の作業内容や時間を入力できるように設計できます。
これにより、個人別の作業実績や勤怠データを詳細に把握することが可能となります。また、アプリ内に承認機能を取り入れることで、勤怠の承認フローもkintone上で完結させることができます。
現場監督による入力と個人による入力を適切に整理し、情報の重複を避けることも可能です。
粗利管理アプリ
売上だけでなく、外注費、材料費、自社の人件費など原価の内訳を詳細に入力・管理します。
これにより、工事ごとの粗利を正確に計算し、経営状況の分析に役立てられます。
写真・ドキュメント管理の補助
kintoneは、外部のクラウドストレージサービスとの連携により、写真や書類の管理を効率化できます。
Dropbox連携プラグインを利用すると、kintoneの工事台帳とDropbox上のフォルダを自動的に連携させ、現場の担当者がスマートフォンで撮影した写真をDropboxに保存すると、それが工事台帳から閲覧できるようになります。
この種のプラグインには、月額1万円程度で利用できるものも存在します。
また、OneDriveを利用している場合、OneDrive上のフォルダのURLをkintoneの該当するレコードに手動で貼り付けることで、同様に写真やPDFファイルなどをkintoneから参照する運用も可能です。
kintone導入時の費用とサポート体制
kintoneを導入し、上記のような業務管理アプリを構築するには初期費用と月額費用が発生します。費用は構築するアプリの複雑さや機能によって異なります。
構築後も、kintoneの運用をスムーズに進めるためのサポート体制が提供されます。
例えば、運用サポートサービスでは、定期的なミーティングを通じて、実際の運用で発生した要望や課題の解決、アプリの改修が行われます。
ライトプランの場合、月1回、1時間のミーティング内でアプリの改修作業が実施されることがあります。これにより、導入後も継続的にkintoneの機能を業務に合わせて最適化していくことが可能です。
kintoneとANDPADの連携を検討している方はペパコミ株式会社へご相談ください
建設業界では、顧客管理から施工管理、勤怠や原価管理まで幅広い業務を効率化・一元化したいというニーズが高まっています。
ANDPADは現場写真管理に強みを持ち、kintoneはデータ集計や多様な業務管理に柔軟に対応できる汎用性が特長です。両者を連携させることで、それぞれの得意分野を活かしながら、全社的な情報共有と業務効率化を同時に実現できます。
導入にあたっては、顧客案件管理や工事台帳など基幹アプリから段階的に進めることが効果的です。
なお、ペパコミ株式会社では、「kintone」を活用した業務支援を行っています。業務効率化にお悩みの方は、ぜひ以下からお気軽にご相談ください。
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