kintoneの導入を成功させるには、単にシステムを導入するだけでなく、明確な目標設定と専門家との協調が不可欠です。
本記事では、製造業A社の導入事例をもとに、導入を成功に導いた要因や、企業が陥りがちな失敗パターン、そして成功企業に共通する特徴を解説します。また、導入の落とし穴を回避し、自社に最適なkintone活用を実現するためのヒントも紹介しているので、ぜひご参考ください。
なお、ペパコミ株式会社では、kintone構築から伴走支援を行っているので、ぜひご相談ください。
kintone導入を成功させるための重要要素
kintoneの導入プロジェクトでは、プロの専門知識と顧客企業の積極的な関与が組み合わさることで、円滑な進行が期待できます。プロに全てを任せきるのではなく、プロと共にプロジェクトを進める意識を持つ企業は、導入がスムーズに進む傾向があります。
kintone導入を成功させたA社の事例概要
A社は製造業に属する企業です。
A社の背景とkintone導入の動機 A社はこれまで、Internet Explorer (IE) でしか動作しない独自のレガシーシステムを使用していました。しかし、IEのサポート終了が迫り、システム刷新の必要性に直面しました。
長期間にわたり基幹システムに依存していたため、その脱却はA社にとって大きな課題です。
kintone導入におけるA社の課題 A社の担当者は多忙を極め、システム刷新に十分な時間を割けない状況でした。本社と他拠点の調整を日常的に行なっており、多忙のため日焼けするほどであったと述べられています。
また、現場の従業員のITリテラシーは高くなく、新しいシステムへの適応に懸念がありました。既存の基幹システムが現場作業に深く根付いていたため、その置き換えは特に困難な印象があったと関係者は述べています。
A社がkintone導入を成功させた要因
A社がkintone導入を成功させた要因は主に以下の3つです。
- 最終的に可視化したいデータの共有と目標設定
- 現場の要望と最終目標の整合性
- 基幹システムからの脱却とkintoneへの適合
それぞれ詳しく解説します。
最終的に可視化したいデータの共有と目標設定
A社は、最終的にどのようなデータを見たいのかという目標を明確に共有していました。明確な目標があったため、現場からの様々な要望が出された際にも、それが最終目標の達成に貢献するかどうかを判断する軸として機能します。
また、目標の共有により、アプリ設計における迷いがなくなり、プロジェクトがスムーズに進みました。
現場の要望と最終目標の整合性
A社の担当者は、最終的に「何を見えるようにしたいのか」「いつまでにそれを実現するのか」という目標を最後までぶれることなく維持しました。
これにより、最初から最後まで一貫したシステム構築ができ、目標に合致しない現場からの要望に振り回されることなく、効率的に作業を進められました。
ブレて良い部分とブレてはいけない部分の判断が大切です。
基幹システムからの脱却とkintoneへの適合
A社は、既存のInternet Explorerで動作していたシステムの使用感を踏襲するか、あるいはkintoneの特性に合わせて使い勝手を変更するかの大きな選択に直面しました。
当初は既存システムの使用感を維持したいという考えもありましたが、最終的にはkintoneの機能に合わせた形でシステムを構築するという大きな決断を下しました。
kintoneの特性を理解すればするほど、既存システムをそのまま踏襲することが難しいと同時に、kintoneに合わせることで様々なことが実現可能であると認識できたからです。この決断が、大きなトラブルなく構築が完了し、納品に至った要因の一つです。
A社がkintone導入に活用したプラグイン
A社の複雑なkintone構築には、複数のプラグインが組み合わせて使用されました。
プラグイン一覧と役割の解説 A社が導入した主なプラグインは下記の通りです。
プラグイン名 | 役割(想定される用途) |
KrewData リアルタイム実行プラン | リアルタイムでのデータ加工や集計、連携など、複雑なデータ処理に活用
データ入力時の補助や支援機能として使用 |
計算式プラグイン | kintone標準の計算機能では難しい、複雑な計算処理を実現するために使用 |
ATTAZoo+プラグイン | 特定のデータ表示や連携機能に活用
印刷用のレポート出力機能として使用 |
これらのプラグインを組み合わせることで、A社が実現したいと考えていた機能のほとんどに対応可能になったと説明されています。
kintone導入後のサポートと内製化の状況
kintoneの構築完了後も、A社に対して継続的なサポートが行われました.
納品期間とサポート体制
kintoneの構築自体は、仮納品が完了し、顧客が実際に触って改修点を確認した後の本納品まで、およそ3ヶ月で完了しました。その後、システムの完成度を高めるためのサポートが約半年間行われました。
サポート期間中の課題と解決策
納品後のサポート期間、特に最初の3ヶ月間は、現場での入力ミスが多く発生しました。これに対してA社は、自社で社内マニュアルを作成し、内容を充実させることで対応しました。カスタマイズ機能を活用し、入力時に確認ダイアログやメッセージを表示するなど、入力ミスを防ぐための工夫が施されます。
また、サポートでは、エラー解消に加えてKrewDataの教育も行われました。
これらの取り組みの結果、最初の3ヶ月間は問い合わせが多かったものの、その後は問い合わせが目に見えて減少しました。
A社のkintone内製化レベル
A社は、kintoneの基本的な機能や、簡単なカスタマイズ、プラグインのちょっとした設定などは自社で対応できるレベルに達しています。
しかし、プラグインの複雑な設定や、KrewDataに関する詳細な作業など、社内で対応が難しい部分については、引き続きペパコミの専門家に連絡し、サポートを受けている状態です。
全てを内製化しているわけではなく、難しい部分のみを外部のプロに委ねるという形で、効果的な内製化を進めています。
kintone導入を成功させる企業の特徴
kintoneの導入がうまくいく企業には、以下の共通する特徴があります。
- 専門家との協調と伴走の意識
- 業務実態と専門家イメージの差を指摘する重要性
それぞれ解説します。
専門家との協調と伴走の意識
kintone導入を成功させる企業は、専門家に全てを任せきりにするのではなく、専門家と協力し、共にプロジェクトを進める意識を強くもっています。
このような「伴走」の姿勢は、導入をスムーズに進める上で非常に重要です。
業務実態と専門家イメージの差を指摘する重要性
専門家は過去の経験や知識から、業界の業務フローの大部分(約7割)を理解し、システムを構築することが可能です。
しかし、残りの約3割は企業固有のコアな業務部分が成功の鍵を握ります。
kintone導入がうまくいく企業は、専門家の業務理解が実際と異なる点、特に企業独自の「残り3割」の部分について積極的に指摘し、詳細を埋める努力をします。
専門家が「ここまで分かっているなら残りも分かるだろう」と顧客が考え指摘を怠ることがあるため、積極的なフィードバックが重要です。
kintone導入で苦労する企業の特徴
一方で、kintone導入で苦労する企業にも特徴があります。
- 専門家のアドバイスを受け入れない態度
- 個別具体的な要望に固執するリスク
- kintone導入成功のためのプロフェッショナルな視点
それぞれ解説します。
専門家のアドバイスを受け入れない態度
例えば「アプリを分割した方が良い」「カスタマイズの動きの条件はこう設定した方が良い」といった提案を、顧客側が受け入れない場合、プロジェクトは困難に直面します。
顧客が「どうしてもこの形にしたい」と自身の思い描いた形に固執すると、結果的に「これが見たかったのに見れない」といった問題が発生する可能性があります。
専門家はプロとして、全体のデータ像や入力フローを踏まえて最適な設計を提案しているため、アドバイスに耳を傾けることが大切です。
個別具体的な要望に固執するリスク
顧客が個別具体的な入力方法や操作感にこだわりすぎると、全体のシステム設計が複雑になり、最終的に見たいデータが見づらくなるなどの問題が生じます。
専門家は、その要望が全体のシステムにどのような影響を及ぼすかを理解していますが、顧客はその場でその影響を認識できないことがあります。
結果として、後になって「見れない」といった問題が顕在化し、後悔する場合があります。このようなコミュニケーションの齟齬を避けるためにも、専門家からの全体最適化のアドバイスを受け入れる柔軟性が大切です。
kintone導入成功のためのプロフェッショナルな視点
kintoneのプロフェッショナルである専門家は、「ペパコミに頼んで良かった」と顧客に感じてもらえるよう、常に技術を磨き、学習を続けています。
kintoneの専門家として顧客に関わる意識を常に持ち、顧客がkintoneを「仕事を変える、楽にするツール」として捉え、積極的に関わることが、導入成功へと繋がるでしょう。
kintone導入には様々な問題が発生し、多角的な視点での検討が必要となるため、専門家はそれらを踏まえて構築を進めています。
kintone導入成功の鍵は「目標の明確化」と「伴走姿勢」
kintone導入を成功させるには、専門家任せにせず、自社の目標や業務特性を的確に伝える「伴走姿勢」が重要です。
A社のように、最終的に何を見える化したいのかというゴールを共有し、現場の要望と照らし合わせながら柔軟に判断する姿勢が、導入の成否を分けます。また、導入後の運用に向けた内製化や継続的な学習も成功には欠かせません。
kintoneを単なるITツールで終わらせず、業務改善の中核として活用するためには、専門家との信頼関係を築きながら、自社主体で導入を進めることが最も効果的です。
なお、ペパコミ株式会社では、kintone構築から伴走支援を行っているので、ぜひご相談ください。
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