「工事注文書って何?」「工事注文書って何のために必要なの?」このような疑問はありませんか。
工事注文書は、単なる事務書類ではなく、「言った言わない」といったトラブルを防ぎ、法律を守るうえで重要な役割を担う書類です。しかし、工事注文書だけでは法的な拘束力がないため、工事注文書の必要性や記載内容については会社によって認識が異なる場合があります。
この記事では、工事注文書の役割や他の書類との違いなど、作成する際に知っておくべき基礎知識をまとめました。書類について理解しスムーズに業務を進めるためにも、ぜひご覧ください。
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工事注文書(工事依頼書)とは

工事注文書とは、発注者が受注者(施工業者)に対し、「この内容と条件で工事をお願いします」という意思を正式に書面で伝えるための書類です。「工事依頼書」や「工事発注書」と呼ばれることもありますが、役割は同じです。
口約束で起こりがちな「言った言わない」のトラブルを防ぐために作成されます。工事注文書に工事の内容、金額、工期といった重要な項目を記載することで、発注者と受注者の認識を一致できるためです。
なお、法律上は工事注文書の発行義務はありません。ただし、書面をまったく交わさずに下請け工事を行うことは、建設業法第19条第1項に違反します。
法律違反となった場合、国土交通大臣や都道府県知事から是正指導や営業停止命令などの行政処分を受ける恐れがあります。建設業法に限らず、税務調査や監査の際は工事注文書が取引の証拠文書となるため、少額の工事であっても必ず書面を取り交わすことが重要です。
工事注文書には保管期間がある
工事注文書は、取引の証拠となる帳簿書類にあたるため、7年間の保管義務が法的に定められています。
法人は、帳簿(注1)を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類(注2)を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(注3)保存しなければなりません。
例えば、3月決算の法人が2025年5月に発行した注文書は、2033年の5月末まで保管しなければなりません。また、工事注文書を発行した事業年度に欠損金(赤字)が生じた場合、保管期間は10年間に延長されます。
保管方法は、書面のままであれば従来通り紙でファイリングします。電子帳簿保存法の要件を満たす場合は電子化の必要があるので、スキャンや管理システムを通じて電子データとして保存しましょう。
工事注文書と発注書・注文請書の違い
工事の取引では似た名称の書類がたびたび登場するため、混乱する方もいるのではないでしょうか。ここでは「注文書」「発注書」「注文請書」の違いについて、それぞれお伝えします。

では、ひとつずつ解説します。
注文書と発注書の違い
注文書と発注書に法律上の違いはなく、基本的には同じ役割の書類として扱われます。どちらも「工事の依頼や資材・サービスを発注する」という意思表示のために発行されるものです。
ただし、企業によっては独自のルールで使い分けているケースもあります。例えば、工事や施工といった無形のサービスに対しては「注文書」を、資材や建材などの有形の物品購入には「発注書」を使用するというように区別している場合があります。
注文書と注文請書の違い
注文書と注文請書はそれぞれ書類の役割が異なります。
注文書は発注者(依頼する側)から受注者(依頼される側)へ「この内容でお願いします」という依頼を示す書類なのに対し、注文請書は受注者が発注者へ「その内容で承知しました」という承諾を示す書類です。
これら2つの書類を取り交わすことで、発注者と受注者の双方で合意したと書面上で証明されます。契約内容に関する認識のズレを防ぎ、後々のトラブルを回避することにつながります。
発注者が工事注文書を発行しただけでは、法的に契約は成立しません。契約は、一方からの「申し込み」と、相手方の「承諾」があって初めて成立します。工事取引においては、以下のようになります。
- 申し込み:発注者が発行する「工事注文書」
 - 承諾:受注者が発行する「注文請書」
 
つまり、「工事注文書」と「注文請書」がそろって初めて、法的に有効な契約が成立するというわけです。受注者から注文請書を受け取らずに工事を進めることは、建設業法違反となる可能性があると覚えておきましょう。
工事注文書に記載する10の項目

| 項目 | 概要 | 
|---|---|
| 1.発行日 | 注文(発注)書の作成日 | 
| 2.注文番号 | 注文内容(注文書)の番号 | 
| 3.発注者の情報 | 発注側の会社名や所在地 | 
| 4.受注者の情報 | 受注側の会社名や所在地 | 
| 5.工事の名称 | 工事の正式名称 | 
| 6.工事内容 | 工事の具体的な施工内容 | 
| 7.工期 | 着工日と完成予定日 | 
| 8.契約金額 | 依頼に対する報酬額 | 
| 9.支払条件 | 契約金額が成立する条件 | 
| 10.問題発生した際の解決手段や備考 | 違約金・損害金などについてや、その他の注意点など | 
工事注文書には、客観的に見て分かりやすく過不足のない情報を記載することが必要です。それでは、それぞれの項目について見ていきましょう。
1.発行日
発行日とは、注文書を作成した日付です。この日付は、単に書類の作成日というだけでなく、注文書の効力が発生する日を意味します。また、発行日は税務処理において取引日として扱われたり、書類保管期間の起算日にもなったりするため、正確に記載しましょう。
2.注文番号
社内で案件を管理するために任意で設定する番号として、注文番号があります。必須項目ではありませんが、記載しておくと注文内容の管理や確認に役立ちます。例えば、取引先から問い合わせがあった際に、注文番号があれば正確かつ迅速に案件を特定することが可能です。
また、支払いに関する面でも注文番号での管理がおすすめです。請求書や納品書と注文番号を紐づけることで、支払金額の間違いや支払い漏れなどを防ぎやすくなります。
3.発注者の情報
発注者の情報は、どこの会社が工事を依頼したのかを明確にするための項目です。以下のような基本情報を記載しましょう。
- 発注会社の正式名称
 - 発注会社の所在地
 - 部署名
 - 担当者名
 - 連絡先(電話番号やメールアドレス)
 
いつもやり取りしている担当者同士であれば、「わざわざ記載しなくていいのでは」と思うかもしれません。しかし、会社として発行する正式な書面なので記載することをおすすめします。
4.受注者の情報
どこの会社が工事を請け負ったのかを示すため、受注者の情報も記載します。発注者の情報と同じく、以下の基本情報を記載しましょう。
- 受注会社の正式名称
 - 受注会社の所在地
 - 部署名
 - 担当者名
 - 連絡先(電話番号やメールアドレス)
 
5.工事の名称
工事の名称は、どの工事に関する注文書なのかを識別するために記載します。「〇〇ビル3階改修工事」や「△△邸新築工事」のように、誰が見ても内容がわかる工事名称を記載しましょう。
同じ取引先と複数の工事を進めている場合、どの工事を指しているのか混乱しやすくなります。混乱を避けるためにも必須の記載項目です。
6.工事内容
具体的にどのような施工・作業を依頼するのかを明確にわかるようにするため、工事内容も記載します。工事の名称だけでは不明瞭な詳細を明記し、発注者と受注者の間で認識を合わせます。書き方の一例は以下のとおりです。
- 外壁下塗り・上塗り
 - 養生(窓・土間)
 - 足場組立・撤去
 - 廃棄物処理
 
認識のずれを防ぐため「外壁塗装工事 一式 」とまとめて記載するのは避けましょう。作業範囲を明確にしておくことで、どの作業が契約に含まれているのかが明らかになります。
なお、注文書に記載がない工事や追加工事が発生した場合は、注文書を別途発行するのが一般的です。
7.工期
工期には、工事を開始する「着工日」と工事を完了させる「完成予定日」を明記します。
工期は発注者と受注者の間で事前に協議し、合意した日付を記載するのが鉄則です。どちらか一方が設定した工期を記載すると、工程遅延や施工不良などトラブルにつながる可能性があります。工事注文書の発行前に工期を協議しておきましょう。
8.契約金額
工事にともなって支払う報酬額として、契約金額も記載します。税抜金額と消費税額、税込の合計金額をそれぞれ明記しましょう。また、「解体撤去費」「内装工事費」「諸経費」など内訳別に数量や単価を記載することで、取引の透明性を高められます。
9.支払条件
支払条件は、契約金額をどのような方法とタイミングで支払うかを記載する項目です。例えば「月末締め翌月末払い」といった支払サイクルや、「銀行振込」や「手形」などの支払方法があります。
着手金や中間金など複数回に分けて支払いが発生する場合は、それぞれの金額と支払日も明記しましょう。
10.問題発生した際の解決手段など
この項目では、「工事に不具合があった」「納期を守れなかった」といったトラブルが発生した場合、どのように責任を分担するか、どのように問題を解決するかなどについて記載します。
- 完成後の不具合に対する受注者の保証責任の範囲と期間
 - 支払遅延や工期遅延に対するペナルティ(遅延利息、違約金など)
 - 裁判の前に調停や仲裁を行うか、管轄裁判所などを指定
 
また、休日や夜間作業の有無などを定め、労務管理や近隣への配慮の基準も備考として記載します。
工事注文書の作成方法は主に2つ
工事注文書を作成するには、主に2つの方法があります。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自社の状況に合った作成方法を選ぶことが重要です。

では、それぞれの作成方法について見ていきましょう。
1.WordやExcelで作成する
手軽な方法としてまず挙げられるのが、WordやExcelを使用して作成する方法です。
インターネット上で無料テンプレートをすぐ入手できるため、コストをかけずに作成を始められます。テンプレートをベースに記載項目を追加したりレイアウトを変更したりと、自社で使いやすい様式へ自由に編集できる柔軟性も魅力です。
ただし、WordやExcelでの作成は手作業になる部分が多く、ヒューマンエラーが発生しやすいのがデメリットです。例えば次のようなミス・間違いがよくあります。
- 過去のファイルをコピーして作成する際、工期を編集し忘れる
 - 書類データが溜まりすぎて、目的の注文書がどこか分からなくなる
 
手軽に作成でき自由度も高い反面、人の手で行うことによる精度の低さや管理不足に注意しなければなりません。
2.管理システムや専用ツールで作成する
工事注文書の作成・管理ができるシステムやツールを導入することも、1つの方法です。
システムを使えば、「入力項目を順に埋めていくだけ」「ボタン1つでほかの書類データと紐づける」といった簡単な方法で注文書が完成します。作成したデータはシステム上に一元管理されるため、作成者以外でも書類を探しやすく、管理が煩雑になることもありません。
デメリットとしては、システムの導入費用や月額利用料が発生する点です。また、システムによっては細かな変更に対応しておらず、自社に合わせた使い方ができないことがあります。せっかく導入したシステムを活用できなければ、コストだけが発生しむだになります。
なお、「いきなりシステム導入はハードルが高い」と感じる場合は、まず無料相談で自社に合ったシステムを見極めるのがおすすめです。
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工事注文書を発行する際の4つの注意点
工事注文書を発行する際、思わぬトラブルを避けるためにいくつかの注意点があります。特に重要な4つのポイントが以下のとおりです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。
1.基本契約書を交わしているか?
何度も取引をする会社とは、取引の共通事項や基本ルールを定めた基本契約書を締結しているか確認しましょう。もし基本契約書を締結していない場合は、注文書に契約約款を添付する必要があります。
契約約款には、契約不適合責任の範囲や支払い遅延による損害金など、工事注文書だけではカバーしきれない取り決めを記載しましょう。
2.記載ミスをしていないか?
工事注文書の記載内容に誤りがあると、取引先とのトラブルに発展する可能性があります。特に契約金額や工期・工事内容などに誤りがあると、取引先との関係や会社としての信頼にも影響します。
もし発行後にミスを発見した場合は、取引先へ連絡したうえで正しい内容の工事注文書を再発行しましょう。 軽微な修正であれば、間違えた箇所に二重線を引き、注文書に押したものと同じ訂正印を押す方法もありますが、解釈のズレを防ぐためにも、取引先に確認のうえで再発行する方が確実です。
ただし、再発行には手間がかかるため、工事注文書を別の担当者がダブルチェックするといった確認体制をあらかじめ整えておきましょう。
3.収入印紙が必要なケースではないか?
工事注文書(発注書)は発注の申し込みをする書類なので、収入印紙を貼る必要がありません。ただし、注文を承諾し契約を成立させる「注文請書」は、課税文書として扱われ収入印紙が必要です。つまり納税義務があるのは、注文を承諾した受注者(=課税文書の作成者)側です。
- 契約を示す文言がある
- 例:下記条件にて契約とします)
 
 - 見積書に対する承諾を示す文言がある
- 例:貴社見積書を承諾のうえ次のとおり工事を注文いたします)
 
 - 双方の署名欄や押印欄がある
 
上記のような形式の工事注文書は、実質的に契約書と同じ扱いになります。そのため、契約金額に応じた収入印紙の貼付が必要です。
4.事前に送付方法を確認したか?
事前に送付方法を確認しておくことも重要です。会社によっては、工事注文書は郵送での受け取りを前提としている場合があります。そのため、メールで送付する際は相手先へ事前に確認しておくのがおすすめです。
なお、ExcelデータやPDFなどの工事注文書をメールで送受信すると、電子帳簿保存法における「電子取引」に該当します。電子取引では、電子データのまま保存する必要があることを覚えておきましょう。
工事注文書の作成はkintone(キントーン)がおすすめ
工事注文書は、発注者と受注者が安心して取引を進めるための重要な書類です。 WordやExcelでも作成は可能ですが、手作業による非効率さや書類管理の煩雑さを考慮しなければなりません。人的ミスを減らし、事務作業をより効率化させるなら管理システムの導入が有効です。
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