工事台帳とは、現場ごとの取引内容をすべて記載し、原価や売上を管理するための帳簿のことです。的確に経営判断をするために役立つ一方で、「複雑で作成に手間がかかる」と悩む企業は少なくありません。
この記事では、工事台帳の基本から、具体的な作成方法や業務を効率化する方法まで解説します。「工事台帳をもっと効率的に管理したい」「もっと正確に記録したい」とお考えの方は、ご一読ください。
なお、ペパコミでは建設業に特化した工事台帳の管理システムを今だけ無料公開しています。実際にお客様から寄せられた悩みを一つひとつ解決しながら完成させたシステムなので、「業務を効率化したい」「精度の高い工事台帳を作りたい」とお考えの方は、以下からお気軽にお試しください。
建設業の「工事台帳」とは?

冒頭でお伝えしたように「工事台帳」とは、現場ごとの取引内容をすべて記載し、工事ごとにかかった費用(原価)を記録し、管理するための帳簿のことです。現場によっては「工事管理台帳」や「工事原価台帳」といった名称でも呼ばれます。
具体的には、1つの工事における売上と、その工事にかかった材料費、労務費、外注費、経費といった原価を記録し、最終的な利益がいくらになったのかを算出します。そのため、会社の利益を管理し、健全な経営を維持するために重要な書類です。
さらに、税務調査や労災保険の申請といった事務手続きの場面でも、工事台帳の提出を求められるケースがあるため、普段から正しく記録する必要があります。
建設業の費用(原価)管理は難しい
建設業の原価計算や管理は、以下の理由から一般的な企業に比べて難しいといわれます。
- 多階層の下請け構造があり、工事費の分類が細かく複雑だから
- 売上や原価を計上するタイミングが特殊だから
3階層に分けて見積書を作成し、それぞれの階層には以下のような内容を正確に記載しなければなりません。
階層 | 内容 |
---|---|
1階層目 | 工事全体の合計見積り額 |
2階層目 | 主要な工事ごとの合計金額 (基礎工事や電気設備工事など) |
3階層目 | 第2階層で示された各工事のさらに詳細な内訳 (配線作業、コンセントの設置など) |
元請けの建設会社は、基礎工事、電気設備工事、内装工事など、さまざまな専門業者(下請け)に仕事を発注します。工事内容によっては孫請けの業者もあるため、工事台帳の管理がより複雑化します。
さらに建設業では、工事の進捗度に応じて、売上と原価を少しずつ計上していく「工事進行基準」という会計方法が用いられます。そのため、常に正確な情報を把握していないと、正しい売上を計上できません。
多くの会社ではこれらの帳簿付けが手作業で行われているため、工事台帳の管理をより難しくしています。
工事台帳を作成する3つの目的
なぜ、手間をかけてまで工事台帳を作成する必要があるのでしょうか。その主な目的は、以下の3つです。

では、ひとつずつ見ていきましょう。
1. 工事ごとの収支を把握するため
工事台帳の最も重要な目的は、工事一件ごとの正確な収支を明らかにすることです。工事に関する情報が各担当者のExcelファイルや頭のなかに散らばっている状態では、全体の正確な状況を把握できません。そこで、材料費、労務費、外注費、経費といった多くの情報を工事台帳に集約し、誰が見ても分かる状態にします。
これによって経営者や現場管理者が、売上に対する予算、原価率、実績にもとづいた動向などを一目で把握できます。その結果、「あの現場は利益が出たらしい」といった感覚的な情報ではなく、「A工事の粗利率は15%。一方でB工事は-2%の赤字」という具体的な数値で判断ができるというわけです。
工事ごとの収支を正確に把握できれば、「一律15%で計上していた一般管理費が、実際には10%前後であった」と新たな事実が判明するケースもあります。工事台帳のデータにもとづいた判断ができれば、赤字工事の発生を未然に防ぎ、会社全体の収益性を高められます。
2. 経営事項審査で提出するため
公共工事の入札に参加する際にも、工事台帳が必要です。公共工事の入札に参加する建設業者は、法律により経営事項審査(経審)を受けることが義務付けられています。
経審では、会社の工事実績を証明する「工事経歴書」をもとに会社の経営状況や技術力などを点数化して評価されます。その工事経歴書を作成するには、正確なデータが記載された工事台帳が必須です。
もし工事台帳が不正確であれば、会社の評価が正当に行われず、受注機会を失う恐れがあります。
3. 税務調査で求められるため
建設業は、一件あたりの取引額が高額で会計処理が複雑なため、税務調査の対象になりやすいです。
税務調査では、売上や費用の計上が適正に行われているかが厳しくチェックされます。各工事の原価の内訳や進捗状況を具体的に説明するには、正確な工事台帳を提示し経理処理の正当性を証明することが重要です。
例えば、調査官から支払いの詳細を問われた際に、工事台帳を示して「A新築工事における、△△工務店への基礎工事の発注費用です」と明確に説明できれば、スムーズに調査が進みます。逆に、工事台帳が不正確だったり、記録が抜けていたりすると指摘を受けるリスクが高まります。
工事台帳に記載する4つの費用項目
工事台帳は、収支の把握や各手続きをスムーズに進めるためにも、正確に記録することが重要です。ここでは、記載する費用項目を以下の4つ紹介します。

それぞれについて解説します。
1. 材料費
材料費とは、工事で使用する資材や部品などの購入費用です。工事を施工するために購入した木材、鉄骨、コンクリートといった資材や、購入にともなう運搬費なども含まれます。
資材の単価、数量、合計金額に加え、材料の仕入先や納品日なども記録しておくと、より管理がしやすいです。工事の規模が大きくなるほど材料費の管理は複雑になりますが、工事台帳の精度を保つために正確に把握しましょう。
2. 労務費
工事に携わった作業員の人件費を、労務費といいます。労務費は以下の2種類に区別して管理することが重要です。
種類 | 概要 |
---|---|
直接労務費 | 工事に直接携わった作業員の人件費 |
間接労務費 | 工事に間接的に携わった作業員の人件費 |
直接労務費と間接労務費は、作業員の役割の違いで区別されます。
直接労務費は工事に直接かかわる従業員へ支払う人件費のことです。一方で間接労務費は、工事をサポートする役割を担う作業員の人件費を指します。具体的には、建設機械のメンテナンスや修理、運搬など、複数の工事に共通してかかる業務に携わった作業員が対象です。
なお、現場の事務所で事務作業を行う従業員は、工事に直接関与していないため、同じ現場にいてもその給与は一般管理費として計上されます。
3. 外注費
外注費は、工事の一部を委託した際に支払う費用です。具体的には、下請業者や、個人事業主である一人親方などに支払う以下のような代金が該当します。
- 足場工事費
- 電気設備工事費
- 水道工事費
- 仮設工事費
電気工事や内装工事など、専門的な技術を要する部分を外部の専門業者に依頼する場合に、この外注費が発生します。1つの工事に複数の協力会社がかかわるため、外注費の管理が煩雑になりやすい点にも注意が必要です。
4. 経費
材料費、労務費、外注費のいずれにも分類されない工事に関連するほかの費用のことを、経費といいます。経費に含まれるのは、以下のような費用です。
- 現場担当者の給与、交通費など
- 現場事務所の家賃、事務用品費など
- 建設機械のメンテナンス費用、燃料など
ここまでに紹介した工事にかかる費用(原価)を管理することを、「原価管理」といいます。詳細については以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

工事台帳を作成する2つの方法
工事台帳を作成する方法は、大きく分けて以下の2つがあります。

Excel | 工事台帳ソフト | |
---|---|---|
メリット | ・導入コストが低め ・従業員の認知度が高い | ・最新データを一元管理できる ・自動集計により作業効率を上げられる ・人的ミスを減らせる ・入力する場所を選ばない ※クラウドシステムの場合 |
デメリット | ・データが分散しがち ・転記の手間が発生する ・最新の情報を見つけにくい | ・操作に慣れるのに時間がかかる ・場合によって専門知識が必要 |
導入で失敗しないためには、自社の用途に合わせた管理方法を選択することが重要です。それぞれの違いについて詳しく解説します。
1. Excelで作成する
多くの企業で導入されているExcelは、コストをかけずに始められる手軽さが最大の利点です。認知度が高く、使用経験のある人がいるため、従業員がイメージしやすい点もメリットです。
一方で、導入したものの、会社の成長とともに活用の限界が見えてくる場合があります。案件が増えるにつれてファイルやシートが増え、管理が複雑化し、「転記が多く手間」「どれが最新情報か分からない」といった問題に悩むためです。
Excelは、できるだけ使い慣れたツールで管理したいと考える企業にとっては、導入しやすいツールです。しかし、「手間がかかる」「人的なミスが減らない」「特定の担当者がいないと業務が止まる」といった課題を抱えている企業が少なくないため、工夫が必要です。
2. 工事台帳ソフトで作成する
工事台帳ソフトや工事管理システムは、Excelが抱える課題を解決するために開発されたツールです。情報を一元管理できるだけでなく、入力の手間やミスを大幅に削減できるので、効率的に精度の高い工事台帳を作成できます。
ただし、新しいツールの導入は、手作業の管理に慣れている従業員からの反発を招くことがあります。「なんだか難しそう」「操作を覚えられない」と考える従業員がいるためです。
その問題を解決するには、以下のように段階的に導入することがおすすめです。
- 工事ごとの原価管理から始め、基礎的なスキルを身につける
- 慣れてきたら、顧客管理、日報管理、勤怠管理などシステムを拡張していく
従業員に導入のメリットを説明することで、混乱を避けながらスムーズに移行できます。社内にシステムが定着すれば、精度の高いデータをもとに経営分析や業務改善などにも役立つため、少しずつ取り入れてみましょう。
【参考】工事台帳には保存期間が定められている
工事台帳を含む会計帳簿や事業に関する重要な書類は、法律によって保存期間が定められています。(参考:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁)
一般的に、帳簿類は7年間、事業に関する重要な書類は10年間の保存が義務付けられています。ただし、正確な期間は会社の状況によって異なる場合があるため、顧問税理士などの専門家へ確認しましょう。
なお、電子帳簿保存法の要件を満たした管理システムを使用すれば、工事台帳を電子データで保存することが可能です。「最新のファイルがどれか分からない」「担当者のPCにしかデータがなく確認できない」といった問題を解消し、必要な情報をすぐに確認できます。
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工事台帳の作成でよくある4つの悩み
Excelや紙での工事台帳を管理する場合、多くの企業が以下のような悩みを抱えています。

では、それぞれについて解説します。
1. 予算・実績の集計に時間がかかる
まず挙げられるのは、予算・実績の集計に時間がかかることです。
複数の業者がかかわる工事で、それぞれの見積もりや実際にかかった費用を集計する作業は簡単ではありません。工事の原価を正確に把握しようにも、「紙に記録されている」「日報や請求書が別のExcelファイルで管理されている」などで、必要な情報が分散してしまうためです。
その結果、どれが最新の情報なのかが分からず、工事の経過や請求処理の正確な把握が難しくなります。さらに、締め作業をする月末に、「必要な情報を集めて整理するだけで数日を要する」というケースも珍しくありません。情報の一元管理ができていないと、見積もりや契約状況の把握にも時間がかかってしまいます。
2. 手入力によって人的ミスが発生する
収集した情報をExcelなどの台帳に手作業で転記する場合、人的ミスが発生するリスクが高まります。どれだけ注意深く作業を行っても、「請求書の金額の桁を1つ間違える」「異なる工事の項目に入力してしまう」といったミスを完全には防ぎきれません。
特に、給与計算のような細かい手作業ではミスが発生しやすく、再計算や修正に多くの時間と労力がかかります。たった1つの入力ミスが「工事全体の利益計算が合わず、原因を探し出すために何時間も費やす」といった事態を招き、生産性を大きく低下させます。
3. 手間がかかり現場の協力を得られない
工事台帳の精度は、現場からの正確な情報提供があってこそ成り立ちます。しかし、報告作業が現場にとって大きな負担となり、なかなか協力が得られないという悩みも多いです。
現場監督や現場担当者は、日々の業務で忙しくしています。そのうえ、事務所に戻ってからExcelに細かな日報を入力したり、レシートを整理したりする作業を求められば、「面倒な雑務」といった声が上がるのも無理もありません。
このような声をそのままにすると、「報告が後回しになる」「内容が正確ではない」といった状況が改善されず、精度の高いデータが集まらないという悪循環に陥ってしまいます。
4. 最新のデータをリアルタイムで把握できない
Excelや紙を中心とした管理方法では、リアルタイムで経営状況を把握することが困難です。現場で費用が発生してから、その情報が経理に渡り、台帳に入力されるまでにタイムラグが生じるからです。情報共有がメールや電話に依存している場合は、さらに時間を要します。
工事ごとの売上と原価をリアルタイムに可視化することは、収支状況を把握するうえで重要です。責任者が「あの工事の利益はどうなっている?」と尋ねても、担当者は「まだ集計中なので分かりません」としか答えられない状況では、経営判断を迅速に行えません。
現場での過発注や赤字工事などの問題が発生しても気づくのが遅れ、事態が悪化するリスクもあります。
工事台帳を作成するならシステムの導入がおすすめ
建設業が抱える多くの悩みを解決し、工事台帳の管理を正確かつ効率的に行うには、システムの導入がおすすめです。

では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1. 業務を効率化しコストを削減できる
システムを導入する最大のメリットは、業務を効率化できる点です。各担当者が入力した材料費や労務費などのデータが工事台帳に自動で集計されるため、手作業による転記や集計業務を大幅に削減できます。
実際に、効率化に成功した以下の事例もあります。
- 3〜4日かかっていた給与計算が、システム導入によって1日で完了した
- 転記作業が減り、月に約20時間の作業時間が削減した
- 営業担当が、事務所に戻ってPCで作業する時間がなくなった
時間には限りがあるので、どのように使うかが重要です。システムを導入することによって工数を減らせれば、担当者の残業時間を削減し、労働環境を改善することも可能です。
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業務効率化に成功した事例については以下で詳細を解説していますので、あわせてご一読ください。


2. 人的ミスを減らせる
システムで管理する場合は、入力ミスや転記漏れといった人的ミスも削減できます。Excelで作成する際はデータが分散しますが、システムを使えば担当者が直接入力するうえ、一箇所にデータを集約できるので、入力の抜け漏れや転記ミスを減らせます。
その結果、工事台帳のデータの信頼性だけでなく、そのデータにもとづいた経営判断の精度も高めることが可能です。ただ、システムの管理ルールを社内に周知する努力は必要です。慣れていない担当者が迷わないよう、「誰が」「どの情報を」「どこに入力するか」が明確にしておきましょう。
3. 最新情報をリアルタイムで把握できる
システムを導入すれば、必要なデータを一元管理できるので、工事の進捗状況をリアルタイムで可視化できます。担当者に都度確認しなければならなかった情報が、どこにいてもシステム上で閲覧できるためです。
最新の情報が常に共有されれば、担当者間の情報共有がスムーズになり、「どの資料が最新か分からない」といった混乱を減らせます。担当者間の「言った・言わない」のトラブルや、古い情報を見て間違った判断をしてしまうミスも防ぎ、業務の精度が向上します。
さらに、売上や原価、粗利、予算と実績の比較などが一目で把握できるため、上司に進捗報告を電話やメールする手間も省け、現場の作業に集中できる点も魅力です。
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